ビブリオエッセー

悲しい定めを変えるために 「龍ノ国幻想1 神欺く皇子」三川みり(新潮文庫nex)

わが家の娘は自分の名前が好きだけど、嫌いなところがあるらしい。理由の一つは、これまで読んだ本に同じ名の登場人物がいなかったから。自分に重ねて物語の世界を楽しみたいのに、と不満そうだった。

でも、そんな不満も解消しそうだ。彼女と同じ名の主人公が活躍する物語を見つけたのだ。しかも古代日本を彷彿させる国が舞台のファンタジー。まず私が読み始めたが、ページをめくる手が止まらなくなった。

設定や世界観が奇抜だ。龍が眠る大地の上にある国、龍(たつ)ノ原(はら)。女は龍の声を聞く能力を持つが生まれつきその能力がない者は遊子(ゆうし)と呼ばれ、殺される定めにあった。主人公は先々代の皇尊(すめらみこと)を父にもつ日織皇子(ひおりのみこ)。姉は遊子として生まれ、十四歳で無残に殺害された。この国では龍の声を聞く能力を持つ男も処刑される。

その後、皇尊が崩御した。日織皇子は定めを覆すため次の皇尊になろうと決意する。その候補は三人。とりわけ強いライバルが不津王(ふつのおおきみ)。御位を狙って熾烈なやりとりが始まる。

しかし日織には秘密があった。姉だけでなく日織自身が女で遊子なのだ。姉の機転で皇子として生き永らえてきた。その後ろめたさと使命感。命懸けの噓とともに生きている。

さっそく娘のひおりにも薦めてみたが彼女の周りには常に数冊の本が順番を待っている。おまけに人の意見に左右されない頑固者だ。

日織の挑戦はこれから、というところで1巻が終わった。次巻を待ちあぐねていたら先日、続編の『天翔(あまかけ)る縁(えにし)』が出た。さっそく読んで、興奮さめやらぬまま、この原稿を書いている。この先、一体どう展開するのか。

さて、うちのひおりは読んでくれるだろうか。二人のひおりから目が離せない。

大阪府高槻市 藤澤由妃(52)

投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556―8661 産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。