男性もレースで…進化するボクサーパンツ

ワコールメンのレースボクサーパンツ。直営店で一番人気は水色(サックス)という=東京都中央区の「ワコールメゾン ギンザシックス」
ワコールメンのレースボクサーパンツ。直営店で一番人気は水色(サックス)という=東京都中央区の「ワコールメゾン ギンザシックス」

性別ごとの「らしさ」にとらわれないユニセックスな服が増え、身につけるものの選択肢は多様化してきた。その潮流が、下着にも到来したようだ。なかでも多様さが目立つのが、ボクサーパンツ。男性下着の定番はどんな変化を見せているのか。(津川綾子)

東京・銀座の商業施設「ギンザシックス」。12月、ワコール(京都)の直営店「ワコールメゾン」に花柄レースを使ったボクサーパンツが並んだ。

レースボクサーパンツは男性用で1枚3960円。オンラインと百貨店など3店でひっそり販売を始めると、「予想以上」(広報)の反響に。当初3カ月分としていた枚数が10日で売れ、増産を決めた。

同社の小池哲夫・メンズインナー商品営業部長によると、レースをボクサーパンツにとの着想は、2年前の顧客調査がきっかけだった。「男性のインナーでも、女性用と同様に、上品さ、きれいさ、品質の良さが求められていた」と小池さん。「男らしさをコンセプトにしてきたが、顧客ニーズとずれていたのではないか」と気づいたという。

上品さから着目したのが、下着では女性向けとされてきたレースだった。男性向けに強度を増したものを開発。繊細だがフィット感のある下着が誕生した。

狙ったのはデザイン的な斬新さ。しかし「はくと通気性がよく、むれにくい上、縫い目が少なく服に響かない」という機能面のメリットも見いだせた。

同社によると、主な購入層は30~40代のファッションに感度の高い男性。「女性もののほうがデザインが優れていてとても羨(うらや)ましく思っていた」と、男性下着の多様化を歓迎する声が購入者から上がった。

変わる「当たり前」

男性用とされてきたボクサーパンツだが、女性の支持もうけている。

身近な衣類などに定評のある「無印良品」を展開する良品計画(東京)は平成24年ごろから婦人用を販売した。「売り上げは伸びている」(広報)という。

その流れはモードにも。パリコレクションで活躍する熊切秀典さんのブランド「ビューティフルピープル」が今年6月、東京で発表した2022年春コレクションでは、ボクサーパンツをはいた女性モデルが登場した。

もとはワコールの男性用ボクサーパンツ。伸縮性があり、SからLLサイズの人がはけるこのパンツに、性や体形の別によらず誰が着ても美しく見える服作りに挑んできた熊切さんが着目した。「サイズやジェンダーの固定観念をなくして、すべての人が自由にはけるものに」と、ワコールとビューティフルピープルから2月に販売する。

これまでも熊切さんは、子供用・大人用を分けずにサイズ展開したトレンチコートやライダースジャケット、上下を逆さにしても着られる服などを生み、服や着る人を固定観念から解き放ってきた。

熊切さんに、その意図を問うと、「新しい『かわいさ』を見つけるのが楽しい。さまざまな可能性がまだたくさんあるはず」。バイク乗りのために生まれたライダースジャケットも、今やさまざまな人が着る。衣服にまつわる「当たり前」は時とともに移ろう。

感性のままに…薄まる境界線

服を買うとき、男用か女用かは気にしない-。博報堂生活総合研究所の生活定点調査に昨年、2割の人がそう答えた。

ワンピースに髪飾り。好きなものを感性のままに
ワンピースに髪飾り。好きなものを感性のままに

都内に住む会社員、渋木陽太さん(24)は、スカートや、フリルやリボンをあしらったブラウスなどを普段から着こなす。

「その日、どんな自分になりたいか、イメージを作ることを楽しんでいる」と渋木さん。取材の日は「ノーブル(高貴)な気分になりたくて」と、グレーのワンピースに、フェイクパールをあしらったヘアピンをつけてやってきた。

街ではスエットの首元にパールのネックレスを合わせた若い男性を見かける。「パール男子」との表現も生まれた。

同研究所の三矢正浩上席研究員は、「世の中全体が『あるべき論』から自由になっている。特に若者は感性に合うものは固定観念にとらわれずに使い、受け入れる」と話す。