勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(372)

虎軍奮闘 巨人と対立 空回り

会見に臨む阪神の野崎球団社長=平成16年7月27日
会見に臨む阪神の野崎球団社長=平成16年7月27日

■勇者の物語(371)

タイガースが「孤軍奮闘」することをスポーツ新聞の見出しでは『〝虎〟軍奮闘』とつける。巨人の1リーグ構想に挑んだ阪神・野崎球団社長がまさにそれ。

「巨人とは対立することになるかもしれませんが、各球団の共存共栄のため、2リーグを維持できる制度を提起しましょう」と、セ・リーグの4球団に呼びかけた。反応は悪くない。どの球団も「2リーグ制が理想」という。だが、積極的には動かない。みな、巨人ににらまれることが怖かったのだ。

野崎は7月23日、東京都内の巨人球団事務所に土井球団社長を訪ね、8項目からなる〝野崎試案〟を渡して2リーグ制存続を説いた。土井は「巨人を除いて〝反巨人同盟〟のようなものを進めようというやり方に、渡辺(オーナー)も強い憤りを感じています」と突っぱねた。

憤りだけではなかった。渡辺オーナーは阪神・久万オーナーと直接「来年、セ6パ5なら2リーグ、セ6パ4なら1リーグにする」ことで合意を取り付けたのである。野崎は窮地に追い込まれた。

「しかたないでしょう。渡辺さんは説得が上手ですから。それにウチの久万と渡辺さんは東京帝国大学の先輩と後輩。昔から仲が良く、久万は渡辺さんに感化されて『プロ野球は8球団1リーグが理想だ』とよくいってましたからね」と野崎は当時を振り返った。

7月26日、12球団実行委員会が行われた。その席で巨人の三山代表は1リーグ制になった場合―として、アジア4カ国の代表による「代替球宴」や「天皇杯」、アジア王者の大リーグ(MLB)プレーオフの出場など〝仰天プラン〟を披露した。野崎は対抗した。

「アイデアは2リーグでも通じるものがある。やはり来季は2リーグを維持し、1年間じっくり検討してはいかがか」。三山代表は「あなたは7月7日のオーナー会議での結論を実行委で覆す気ですか!」と語気を強めた。

「決定事項ではない。議決もされていない。わたしはもっと議論すべきだと言っているんです」。すると三山代表は含み笑いをしながらこう言ったという。

「それは野崎さんの個人的な意見じゃないんですか? おたくのオーナーはウチの渡辺と同意見と聞いておりますが」

まさに「虎軍奮闘」である。(敬称略)

■勇者の物語(373)