ソウルからヨボセヨ

「氏」の使い方にご注意

韓国南西部の光州地裁に入る全斗煥・元大統領(共同)
韓国南西部の光州地裁に入る全斗煥・元大統領(共同)

韓国で先月亡くなった全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領について、与党関係者やメディアが「元大統領」の呼称を避け、「全斗煥氏」としきりに呼んでいたのが印象的だった。「氏」は韓国語でも「シ」と発音し、韓国語を勉強した際、「さん」の意味だと教わった。

ただ、韓国で「氏」は敬意に欠けるイメージがあり、目上の人には肩書に「さま」(韓国語で「ニム」)を付けて呼ぶのが通例だ。「金(キム)部長さま」「朴(パク)教授さま」といった具合だ。

全氏は1980年に民主化デモを弾圧し、多数の死傷者を出した光州事件の首謀者とされるだけに、与党もメディアもわざと不快感を示すために「氏」呼称を使ったのだ。被害者への謝罪の意を生前示し、今年10月に死去した盧泰愚(ノ・テウ)元大統領が「元大統領」と呼称され、礼遇されたのとは大きな違いがあった。

日韓で同じ「氏」を使うだけにトラブルもある。日本人記者が番組で「文在寅(ムン・ジェイン)氏」と話したのを、韓国語でも「氏」呼称のまま放送したテレビ局が「大統領に失礼だ」とバッシングされたこともある。

初対面の相手の肩書が分からず、困ることも多い。仕方なく相手を「先生さま」などと呼ぶ場面もよくある。「誰にでも『さん』付けすれば済む日本語は楽ですね」とうらやむ韓国人の知人もいる。(桜井紀雄)