国土交通省が毎月公表する「建設工事受注動態統計調査」で、データを二重に計上するなどの不正が広く行われていたことが分かった。3年前に厚生労働省などの統計不正が発覚した際も、今回の国交省の不正は見過ごされていたという。
公的な統計データは、政策立案の基礎となる存在である。それが歪(ゆが)められていたことは、政策そのものの正当性が問われる深刻な事態である。
とくに今回の不正では、事業者から寄せられた受注データについて、国交省が指示して都道府県の担当者に書き換えさせるなどの操作をしていた。政府の統計に対する信頼性を根本から損ねる悪質性の高い行為といえる。
岸田文雄首相は統計不正について国会で陳謝し、原因究明と再発防止を約束した。政府は主要な統計を改めて点検し、不正の有無を徹底的に調査する必要がある。
建設事業者が公的機関や民間企業から受注した工事実績を集計する建設工事受注動態統計は、重要性が高い政府の基幹統計に位置付けられ、国内総生産(GDP)統計などにも使われている。今年4月以降はデータの処理方法を変更し、適正化を図った。
調査票の提出期限に間に合わなかった建設事業者の受注実績について、国交省は都道府県の担当者に対し、不適切な集計を指示していた。その結果、事業者のデータが二重に計上されていた可能性がある。
政府の統計をめぐっては、厚労省の毎月勤労統計で不正な手法が発覚し、政府全体で統計行政を見直したばかりだ。総務省がデータを一括保管し、必要に応じて再集計できる仕組みとした。だが、国交省は建設統計の不正を見過ごし、会計検査院の指摘で発覚したという。
同省の統計行政に対する意識の低さには呆(あき)れるばかりである。まずは不正の全容を解明し、再発の防止に努めねばならない。とくに今回のような統計データの書き換えは統計法に抵触する疑いもあり、厳正な処分が欠かせない。
社会情勢が大きく変化する中では、求められる統計も変わってくる。政府は統計不正を受け、基幹統計を5年ごとに入れ替えるよう検討することにしたが、形骸化した統計の改廃とともに、現場で統計データが適正に集計されているかの検証も必要だ。