円安で企業の原材料コスト上昇 バブル直前の水準に

東京証券取引所の電光掲示板=東京・日本橋兜町
東京証券取引所の電光掲示板=東京・日本橋兜町

米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した量的金融緩和策の終了前倒しは市場関係者の想定した範囲内に収まり、16日の株式市場はリスク回避の姿勢が和らいで買い注文が優勢になった。だが、米国の政策金利引き上げ方針は日本から投資資金を流出させ、円安が原材料コストの上昇を招く。企業物価は既に昭和60年代のバブル景気直前の水準に高騰しており、新型コロナウイルス禍からの景気回復を妨げる恐れがある。

「サプライズなく穏当に通過し、金融市場では(株式など)リスク資産を積極的に買う流れが強まった」

みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストはこう指摘する。市場はFRBが打ち出した来年3回の利上げ方針を織り込んでおり、保有資産の圧縮など追加の金融引き締めに踏み込まなかったことで安堵(あんど)感が広がった。今後は年末に向けて株価が上がりやすい「年末ラリー」に入ると予想する。

16日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、終値は前日比606円60銭高の2万9066円32銭と3週間ぶりの高値だった。

一方、米国の利上げが早まることでマイナス金利政策の終わりが見えない日本との金利差拡大が改めて意識され、外国為替市場では投資に有利なドルを買って円を売る動きが強まった。16日の東京市場の円相場では、1ドル=114円台前半まで円安ドル高が進んだ。

こうした円安に経済活動の再開に伴う原油高の影響が重なり、財務省が16日発表した11月の貿易統計(速報)は輸出から輸入を差し引いた貿易収支が9548億円の赤字だった。赤字は4カ月連続で、赤字額は1年10カ月ぶりの大きさだ。

輸入品は製品の原材料を中心に幅広く値上がりしており、日本銀行がまとめた11月の国内企業物価指数は昭和60年12月以来の高水準だ。今後は企業がコスト増分を販売価格に上乗せして家計負担が増すと懸念されるが、デフレ心理が根強い国内で価格転嫁できなければ今度は企業収益が圧迫され経営が行き詰まりかねない。「悪い円安」が、いよいよ持ち直しかけた日本経済の足かせになってきた。(田辺裕晶)