東京都の島嶼(とうしょ)部で生産されている焼酎やラム酒などの地酒「島酒」の知名度を向上させようと、都が通販会社と連携し、特集サイトを開設した。新型コロナウイルス禍で島嶼部の観光客は激減しているが、個性豊かな島酒を起点に、地域の魅力発信につなげたい考えだ。
特集サイトは、生鮮食品の通販会社「食文化」(中央区)が運営する「うまいもんドットコム」と「豊洲市場ドットコム」内に開いた。サイトのキャッチフレーズは「まだ世界が知らない蒸留酒。」。
八丈島の焼酎や小笠原諸島のラム酒など10島で造られている14点の島酒を販売。来年3月末まで開設しており、先着1千件限定で送料無料のキャンペーンも行っている。期間中は特集サイトにつながるバナーをトップページに掲げる。
商品欄には、伊豆諸島の固有種で世界最大サイズのユリ「サクユリ」を原料とした焼酎や、海底で1年間熟成されたラム酒など、他では飲めないユニークな酒がずらりと並ぶ。
中でも関心が高いのが、日本一人口の少ない村、青ケ島村で造られている麦麹芋焼酎「青酎(あおちゅう)」だ。
島産の芋と麦が原料で、芋の甘さと、炒(い)った麦の香ばしさが特徴で、生産量が限られていることから〝幻の焼酎〟とも呼ばれる。青酎ファンという渋谷区の男性会社員(42)は「鼻に抜ける爽やかさと甘い香りがマッチしていてついつい飲み過ぎてしまう」と話す。
都の島嶼部で焼酎が造られるようになったのは嘉永6(1853)年。八条島に流刑となった鹿児島の商人、丹宗庄右衛門が、八丈島で栽培されていた芋と麦を使って、焼酎造りに取り組んだのが始まりだった。
次第に焼酎造りは他の島々にも広がっていき、現在の島酒文化の基礎となる。島では米が貴重だったため、代わりに「麦麹で仕込む芋焼酎」という全国的にも珍しい製法が定着したという。
都によると、今回の事業は島嶼部のブランド化の取り組みの一環。コロナ禍で島嶼部の観光客は減少しているが、都振興企画課の担当者は「個性豊かな島酒を入り口に島嶼部に関心を持ってもらい、コロナ禍が落ち着いた際に足を運んでいただければ」と期待を込めた。(竹之内秀介)