100歳時代

重い掛け布団で不眠改善

ずっしりとした重みは今やセールスポイントに-。オーダーメードで綿布団を作る「ふとんのよしの」の吉野一也社長
ずっしりとした重みは今やセールスポイントに-。オーダーメードで綿布団を作る「ふとんのよしの」の吉野一也社長

寒い冬、ぐっすりと眠るには寝具選びが大事だ。最近、「重い」掛け布団が不眠を改善し、睡眠の質を良くするとの研究が注目されている。専門家によると、重みが本能的に「安心感」につながっている可能性があるとの指摘も。「軽さ」が売りの羽毛の掛け布団が主流になるなか、ずっしりと重い昔ながらの綿布団も再び脚光を浴びそうだ。(山本雅人)

約8割の人が改善

この研究は昨年9月、睡眠分野の国際的な医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・スリープ・メディスン」にスウェーデンのグループが発表した。

重度の鬱や双極性障害(躁鬱病)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの診断を受け、不眠症状がある18~77歳の男女120人を2群に分け、一方の群には重い毛布(6~8キロ)、もう一方の群には軽い毛布(1・5キロ)を寝具として4週間使ってもらい、睡眠の状態を調べた。

その結果、不眠の重症度を表すスコアで、軽い毛布で改善した人は5・4%しかいなかったのに対し、重い毛布で改善した人は59・4%に達した。その効果は使用1週間後に表れ、実験後に軽い毛布から重い毛布に切り替えた人を含め、重い毛布をさらに12カ月継続して使い続けた人の78%で睡眠障害に該当しないレベルにまでスコアが改善されたという。

梶本修身・東京疲労・睡眠クリニック院長
梶本修身・東京疲労・睡眠クリニック院長

この結果について、東京疲労・睡眠クリニック(東京都港区)の梶本修身院長は、ネコやイヌが眠る際に狭い場所を好む例を挙げ、「母親の懐に抱かれているような安心感があることで、寝つきが良くなる」とし、「人間の場合は、重い布団にすることによって安心感を持ち、睡眠の質が改善するのでは」と説明する。

また、日本人の体格も考慮した適切な布団の重さについては、標準的な綿の掛け布団(シングルサイズ)とほぼ同じ「4キロぐらいではないか」と語る。

綿布団に脚光

シニア世代は子供のころから綿布団で育った人も多いとみられるが、最近はふんわりと軽い羽毛布団が普及している。

そんななか、同杉並区の寝具店「ふとんのよしの」では、自らも布団職人である吉野一也社長が顧客の要望を聞き取り、生地や中綿の種類、重さ、厚さ、サイズなどを調整して手作りするオーダーメードの綿布団を販売。

布団の技能者養成専門校だった東京蒲団(ふとん)技術学院(平成18年に閉校)で専門技能を習得した吉野社長は、綿布団について「保温性と吸湿性に優れ、冬は温かく、夏は汗をしっかり吸い取ってくれる」と良さを語る。しかし、値ごろな価格で羽毛布団が手に入ることに加え、綿布団を作れる職人の減少などもあり、需要が減っていったという。

吉野さんは、「保温性や吸湿性などといった綿布団の良さをこれまでなじみがなかったという若い世代の人たちにも知ってもらいたい」と話す。

布団を重くする以外にも、快適な睡眠のカギとなる「安心感」を高める方法があるという。梶本院長によると、その一つが「入眠儀式」と呼ばれる、スムーズに睡眠に入るための行動を習慣化する方法だ。

梶本院長は「旅行や出張先で眠れなくなるのは、ふだんと違う場所で安心感が失われることの影響が大きい」と説明する。室温や寝具といった環境の快適さに加えて、「入浴から睡眠までの行動パターン(手順)を毎日同じにするよう心がけてほしい」と話している。