元地下アイドルの渋谷区議「生きづらさ」減らしたい

渋谷区議の橋本侑樹さん=11月15日、同区(浅上あゆみ撮影)
渋谷区議の橋本侑樹さん=11月15日、同区(浅上あゆみ撮影)

元地下アイドルで東大卒、今は渋谷区議-。ユニークな経歴を持つ橋本侑樹さん(29)が、区政に新風を吹き込もうと奮闘している。8日に閉会した区議会定例会ではアイドル時代の経験を生かし、区内のライブハウス支援を実現させた。政治家に必要な調整能力はこれからとされるが、「生きづらさを減らしたい」として女性の健康問題などの政策課題に取り組んでいる。

橋本さんのステージは、ライブハウスから議会に移った。アイドル時代からやってきたビラ配りやSNS(会員制交流サイト)の更新、そして大勢の前での演説は慣れており、「批判的な言葉を受け止める強い心もある」と笑う。

17歳から芸能活動を始め、ホッケーマスクをかぶったパフォーマンスが特徴的な「仮面女子」のメンバーとして活躍した。その傍ら、平成24年には一浪して東京大文科三類に合格。テレビの報道番組などでコメンテーターを務めることが増えると「政治を学びたい」と決意し、28年、小池百合子都知事が立ち上げた「希望の塾」に入塾した。

30年には、仮面女子の仲間だった猪狩ともかさん(30)が倒れてきた看板の下敷きになり、車いす生活となる事故があった。「私は何もできないのがもどかしかった」。31年4月の区議選で出馬するきっかけの一つになったという。

「あたらしい党」から立候補し、現在は無所属で長谷部健区長と志を同じくする会派「シブヤを笑顔にする会」に所属している。

当選から2年、議会での自身の役割は「攻めの提案をすること」という。企業のスタートアップ支援や、保育園入園申し込みの電子化などの政策を提言。換気の難しいライブハウスでの感染症対策にも取り組み、8日閉会の定例会では、ライブハウスの換気工事助成などの予算をつけた。

アイドル時代には痩せることを強要され、過度のダイエットで2年間ほど生理が来なかった経験を持つ。「当事者として女性の生きづらさを変えていきたい」と女性の健康問題へのアンテナも高い。子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンの啓発にも力を入れる。

ただ、政治家に不可欠な調整力には課題があり、「時には意見が合わない議員に根回しして、政策を通すことも必要」と区関係者。「行政との関係性や他の会派の根回し、立ち回りが難しい時もある」と話す区議もおり、先輩議員らの力を借りることも多い。

それでも区民の中村通夫さん(73)は「新たな発想で若い女性に街を変えてほしい」と期待する。

「生きづらさを減らし、『渋谷は暮らしやすい』と言ってくれる区民を増やしたい」。奮闘は続く。(浅上あゆみ)

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