社説検証

外交ボイコット 産経「日本は輪に加われ」 朝毎は米中の応酬を危惧

日本に住むウイグル人や香港人による「自由」を求めるデモ行進。日本政府に北京五輪の「外交ボイコット」を求める声も上がった =11日、東京・渋谷
日本に住むウイグル人や香港人による「自由」を求めるデモ行進。日本政府に北京五輪の「外交ボイコット」を求める声も上がった =11日、東京・渋谷

バイデン米政権が、中国の人権弾圧への抗議として、来年2月からの北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しないと発表した。「外交ボイコット」である。産経が全面的に支持し、日本も同じ措置を取るよう岸田文雄首相に求めたのに対し、朝日や毎日は、米中対立のエスカレートを危惧した。

先月中旬、米紙ワシントン・ポストが「検討中」と報じ、産経はこの時点で、賛意を表明し、「北京五輪を、人権を抑圧して恥じない習政権を称揚する場にしてはいけない。外交ボイコットは深刻な人権侵害を許さない意思を示し、弾圧に苦しむ人々に寄り添うものだ。人権を重んじる国として日本もその輪に加わるべきだ」と論じた。

中国の人権状況の劣悪さは疑いようもない。新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)と人道的犯罪、香港での民主派弾圧などのほか、中国女子テニスのトップ選手、彭帥(ほう・すい)さんが元副首相に性的関係を強要されたと訴えた後、動静が不明になった問題も起きた。ホワイトハウスは今月6日、外交ボイコットを正式に発表した。

日経は「中国は国際社会の批判を深刻に受け止め、改善に動くべきだ」と訴えた。読売は「北京五輪に各国の首脳や閣僚らを集め、中国の存在感を内外に示す思惑は狂いつつあるのではないか。こうした事態を招いたのは、人権抑圧の非難に『でっち上げ』と反論するだけで情報を公開しようとしない中国の体質である」と断じた。

米国内で、選手団派遣を見送るよう求める強硬論も出ている。日経は「多様性の尊重という五輪の意義と人権の重視は不可分だ。開催への実質的な影響を抑えた形で人権重視のメッセージを伝える手段として、外交ボイコットは理解できる」と評した。読売も「五輪に向けて準備してきた選手の立場を尊重しつつ、中国に断固としたメッセージを送る必要があると判断したのだろう」と受け止めた。

朝日はバイデン政権の措置に批判的だった。「付随的な意味しかない政府代表の参加をやめることで、中国への強腰と人権重視の看板をアピールしたいようだ。ただ、この措置が実際に問題解決につながる見通しはない。米国は他国に同調は求めないというが、とくに対米関係を重んじる同盟・友好国に『踏み絵』を迫るのは確かだ。中国国民の胸中には人権意識よりも、米国への反発心を強く残しかねない」と不安を並べた。

毎日は「対立がエスカレートすれば、影響を受けるのは選手たちだ。亀裂を深めないよう、各国が知恵を絞らなければならない」と強調した。

米国に次いで、英国、オーストラリア、カナダが外交ボイコットへの参加を発表し、フランスは不参加を表明した。だが、日本政府は態度表明を躊躇(ちゅうちょ)している。

岸田首相は「五輪の意義、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と述べたが、産経は「いかにも悠長な発言で深刻な人権状況への憤りが感じられない」と批判し、中国政府が人権侵害を反省しない以上、日本のとるべき道は、外交ボイコットの輪に加わるほかないと主張した。「首相や閣僚、使節団が五輪の開会式などで、弾圧を続ける中国政府の責任者と握手することほど、日本の名誉と国益を損なうことはない」とも指摘した。

完全な外交ボイコットでなく、派遣規模やレベルで調整する案もある。だが、ここは、岸田首相の「人権重視」がどこまで本気か、はっきりさせる機会だ。中途半端な対応で終わらせてはいけない。(内畠嗣雅)

北京五輪外交ボイコットをめぐる主な社説

【産経】

・外交ボイコットの決断を(11月21日付)

・首相は旗幟(きし)を鮮明にせよ(12月9日付)

【朝日】

・大国の争いと決別を(12月8日付)

【毎日】

・亀裂深めない知恵が必要(12月8日付)

【読売】

・不信の払拭は中国の責任だ(12月8日付)

【日経】

・中国は人権への懸念を深刻に受け止めよ(12月8日付)

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