NHK、若手職員らの企画50本放送 新しさ、多様さを模索

NHK放送センター
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NHKは今年度、「新しいNHKらしさ」を追求する新たな番組を総合テレビのゴールデン・プライム帯(午後7~11時)で相次いで放送している。前田晃伸(てるのぶ)会長肝煎りの企画で、若手からベテランまで、組織の縦割りを越えた職員らの提案の中から計50本が放送される。レギュラー化を目指してさまざまな実験的な番組が放送される中、10月に自身の企画が放送された30代の職員らに番組を制作した経緯や反響を聞いた。

こうした番組は、今年度始まった経営計画に「新しいNHKらしさの追求」が掲げられたことからスタートした。有吉伸人・放送総局特別主幹は「新しいNHKらしさに定義があるわけではないが、視聴者のニーズが多様になる中、番組も多様であるべきだ」と説明する。

内容に適した曜日や時間帯を考えながら番組の放送予定を決める「編成」を行う部署に「開発番組プロジェクト」を作り、これまで番組制作を担ってきたディレクターや記者に限らず、関連団体などからも広く企画を募集した。企画の選考には、編成だけでなくマーケティングや経理といった別の仕事をしている職員も加わった。

「若い作り手の発想を大事にしたい」(有吉さん)との思いから、若い視聴者に向けた番組を35歳以下で作る試みも行った。この年齢枠であれば所属や職種に関係なく応募可能とし、集まった企画は35歳以下の職員らで投票を行って採択した。

ゲームを文化として

こうしたさまざまな試みの中から、若い作り手によって作られたのが、10月に放送された「ゲームゲノム」と「悲→喜カメ」だ。

「ゲームゲノム」は自身もゲームが好きで、「ゲームに感性を育てられた」と語る制作局の平元慎一郎ディレクター(32)の企画。ゲームが好きな女優、本田翼さん(29)をMCに、ゲーム「デス・ストランディング」の魅力を紹介する内容だった。平元さんは「出演者が対戦する番組はあっても、これまで文化、教養の面からゲームを取り上げた番組はなかった。ゲームを文化として伝えていくためにも、レギュラー番組化を目指したい」と意気込む。

もう1本の「悲→喜カメ」は、日常の悲劇的な出来事を、カメラを引くように発想を転換させることで喜劇に変える方法を紹介する番組。「新人時代、叱られて精神的に参っていたときに無意識で身に着いた防衛法が企画の基になった」と語るのは報道局の高松俊ディレクター(33)だ。

高松さんは同期の景山潮ディレクター(31)と「よくある悲劇」を聞いて回り、それを喜劇に転換する方法を考えた。放送後は「困った状況に悩む人や、精神的なつらさを抱える人から反応があった」という。

テレビ離れ防げるか

これらの開発番組は放送後、視聴率や視聴者の声だけでなく、どういうターゲットにどう響いたかといった独自の調査が行われている。背景には、若い世代でテレビが見られなくなっていることへの危機感があり、作り手もそれを意識して「新しいNHKらしさ」をそれぞれ定義している。

高松さんは「われわれの世代は閉塞(へいそく)感ある社会で育った。現実を転換する発想法を使って、自分たちで楽しめれば最強だと考えて番組を作った」と話す。景山さんは「若い人はテレビの文法に飽きていると思うので、押し付けがましくない演出を意識した」という。

「若い感性で作ったからといって若い人に届くわけではない。ただ、同じ時代に生きてきたから感じ取れる何かはあると思う」と平元さん。放送後、ツイッターなどのSNSでは反響も多く寄せられており、手応えを感じている。

(道丸摩耶)

今年度に50本の放送を予定する「新しいNHKらしさを追求する番組」は、12月下旬~来年1月初旬にかけて、計7本放送される。

このうち、12月27~29日に3夜連続で放送される「声がききたい。」は、電話で話す姿だけを10分間映し続けるショートドラマ。入局2年目の若手ディレクター2人が制作した。

すでに放送された番組の中には、視聴者の反響などを踏まえ第2弾が放送されたものもある。今回も、27日放送の新感覚お笑いネタ番組「笑いをシェアしよう! れこめん堂」と、来年1月8日放送のドキュメンタリー「ふたりのディスタンス」は前回の放送をパワーアップさせた第2弾だ。

正籬(まさがき)聡放送総局長は「視聴者の反響を詳細に分析して、来年の改編に取り入れていく」と話している。