グロー損害賠償訴訟 「係争中」 口閉ざす関係者

今年1月12日、Zoomを使ったオンライン会見で女性2人は「(業界には)ハラスメントを受けても『受け流すのがプロだ』という偏った習慣が今も根強く残っている。裁判を北岡氏やグローの問題と片付けず、自分の職場でも起こりうる、あるいはすでに起こっていることと捉え、組織の在り方や人を大切にすることを考え直してもらいたい」と訴えていた。

■業界のビッグネーム

この訴訟が一つの社会福祉法人の問題に終わらなかったのは北岡氏が障害者福祉業界のビッグネームだからだ。

今年は新型コロナで中止となったが、北岡氏は毎年2月に大津市内のホテルで開催される業界の祭典「アメニティーフォーラム」を中心になって運営していた。フォーラムには全国の業界人だけでなく知事や国会議員ら政治家、官僚、文化人など1200人を超える関係者が集う。また、北岡氏は厚労省社会保障審議会障害者部会委員、内閣府障害者政策委員会委員に選任され、一定の影響力を保持(ともに昨年11月辞任)。そんな北岡氏を〝障害者福祉業界の天皇〟と称する人もいる。

個人的にも北岡氏の幅広い人脈に接したことがある。

平成28年2月、アメニティーフォーラム開幕日に開く飲み会に参加しないかと、親しい知人を通じて北岡氏から誘いがあった。同市内の洋風お食事処では、北岡氏のほかフォーラム参加の安倍昭恵さんらとともにカウンターに座った。少し遅れてタレントの梅沢富美男さんも駆け付け、楽しいひと時を過ごしたが、2度目のファーストレディーだった昭恵さんと気軽に会食する北岡氏の〝実力〟を強く意識した。

■求められる県の対応

提訴後、北岡氏は口を閉ざしているがグローはホームページで「一方的な糾弾がなされておりますが、当方の主張を的確に行い、適切かつ真摯(しんし)に対応する」とコメントしている。

原告の支援団体によると、訴訟は非公開の進行協議中で、傍聴できる弁論は来年1、2月になる。これまでに原告が主張する北岡氏によるセクハラ、パワハラの不法行為は100以上に上り、準備書面で提出したという。

「係争中」を理由に関係者は性暴力、ハラスメントについて口を閉ざす。業務への影響もグローや、グローを障害者支援施設「むれやま荘」(滋賀県草津市)など2施設で指定管理者に指定している県は「支障はなく、影響もない」と口をそろえる。ただ、「問題がないわけない」という厳しい声はある。また、スキャンダルの表面化から1年が経過し、「『熱りが冷めた』と、なかったことにされる嫌な予感がする」「悲痛や怒りの言葉が蠢いている」と憂慮する関係者もいる。

糸賀一雄生誕百年記念事業(平成26年)の実行委員に北岡氏とともに名を連ねた滋賀県湖南市の前市長、谷畑英吾氏(55)は「グローが滋賀のイメージを大きく損なったのは確か。県は訴訟の行方を見守るだけでなく、福祉業界の実態調査を自ら実施し、性暴力やセクハラなどの根絶を宣言すべきだ」と迫る。

裁判は長期化が必至。「行方を見守る」という決まり文句でやり過ごせるほど、軽い問題ではない。(野瀬吉信)

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