主張

家族会新代表 「拉致」への怒りを新たに

家族会の人事について説明する飯塚耕一郎さん、新代表の横田拓也さん、早紀江さん(左から) =11日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
家族会の人事について説明する飯塚耕一郎さん、新代表の横田拓也さん、早紀江さん(左から) =11日午後、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)

北朝鮮による拉致被害者家族会の新代表に、横田めぐみさんの弟で事務局長の拓也さんが就任する。拓也さんは53歳で、新たな世代が家族会代表の重責を担う。このことは、拉致との戦いの残酷な長さを象徴する。

平成9年に発足した家族会の初代代表はめぐみさんの父、滋さんが10年務め、昨年6月に87歳で亡くなった。19年に代表を継いだ田口八重子さんの兄、飯塚繁雄さんは14年務めてきたが、83歳の現在、体調不良を訴えている。めぐみさんの母、早紀江さんも85歳となった。拉致被害者の親世代は皆、高齢である。滋さんをはじめ、鬼籍に入られた方も多い。

拓也さんは代表就任にあたり、「姉が拉致されたとき私は9歳。その44年後に3人目の代表として戦わなければならない現実に、例えようのない大きな矛盾を感じる」と述べた。

この大いなる矛盾を家族だけに背負わせてはいけない。被害者の帰国は政府が果たすべき責務である。政府を突き動かすのは国民全体の怒りだ。この機に、その怒りを新たにしたい。

北朝鮮は、14年の日朝首脳会談で拉致の事実を認めて謝罪し、蓮池薫さんら5人の被害者が帰国したが、めぐみさんら8人については「死亡」と伝え、再調査の約束すら反故(ほご)にしたままだ。

膠着(こうちゃく)状態を打ち破るには、同盟国米国をはじめとする国際的圧力を強め、拉致問題の解決なしに北朝鮮は未来を描くことができないと、金正恩朝鮮労働党総書記に理解させることだ。その上で岸田文雄首相が自ら金正恩氏との首脳会談に臨み、被害者の解放、帰国を約束させなくてはならない。

拓也さんは「なぜ、政府は解決できないのか。静かな怒りの気持ちを持って臨む」とも述べた。「静かな怒り」が政府にも向けられていることを、岸田氏は重く受け止めるべきである。

岸田氏は11月13日、国民大集会に出席し、「拉致問題は岸田内閣の最重要課題だ。私の手で必ず解決しなければと強く考えている」「金氏と条件を付けずに直接向き合う決意だ」と述べた。

言葉はいい。拉致問題で政府に求めるのは「聞く力」ではなく、具体的な「行動」である。早紀江さんは「拉致解決の願いは父母の思いであり、日本国家の問題でもある」と述べている。