【ワシントン=渡辺浩生】前駐日米国大使のウィリアム・ハガティ上院議員が14日までに本紙のインタビューに応じ、バイデン政権が外交的ボイコットを決めた来年2月の北京冬季五輪について、人権や法の支配を尊重する別の国へ開催地を変更すべきだとの考えを示した。また、インド太平洋地域における対中国抑止戦略で最も重要なのは日米同盟だと強調し、議会が次期駐日大使の人事を早期に承認するよう訴えた。
ハガティ氏は五輪の開催地について「人権と法の支配、国際規範を尊重する国」にすべきだと指摘。「中国の新疆ウイグル自治区ではジェノサイド(民族大量虐殺)、強制不妊、強制労働が続いている。(中国は)隣国に攻撃的な態度をとり続けている」とし、「立ち上がって中国に『もうたくさんだ』という時期にあると思う」と述べた。
日本に対しては「主権を尊重するが、(米政府と)同じ行動をとるよう望む」と述べ、岸田文雄政権が外交的ボイコットに踏み切ることに期待を示した。
2017年から19年まで駐日大使を務めたハガティ氏の後任として、バイデン大統領はオバマ政権の首席補佐官やシカゴ市長などを歴任したラーム・エマニュエル氏を指名。上院外交委員会が11月3日、駐中国大使に指名されたニコラス・バーンズ元国務次官とともに承認した。しかし、大使人事の承認は議会運営上の駆け引きで全般的に遅れており、13日現在で60カ国以上の大使人事のうち承認は9カ国にとどまっている。
ハガティ氏は駐日大使の承認が遅れていることについて、「(議会が)国際的立場よりも国内状況を優先させていることを大変憂慮している」と発言。エマニュエル氏に関しては「地域の安全と安定に強固な日米同盟が極めて重要という見解で私と完全に一致している」と述べ、同氏の着任は「中国や北朝鮮、ロシア、同盟国の韓国や(パートナーの)台湾に重要なメッセージとなる」と強調した。