活写

戦闘機の丸洗い

F-15J戦闘機を洗浄するMRO Japanの整備士ら
F-15J戦闘機を洗浄するMRO Japanの整備士ら

沖縄・那覇空港には航空自衛隊や海上保安庁の基地が隣接している。その空自基地で、今年から自衛隊機の洗浄を民間企業「MROJapan」が請け負い、話題になっている。航空機の整備や修理を専門にする同社だが、戦闘機の洗浄は初めてという。通常と何が違うのか。作業を取材した。

那覇基地に離陸する航空自衛隊のF-15J戦闘機。民間機と滑走路を共用で使用している
那覇基地に離陸する航空自衛隊のF-15J戦闘機。民間機と滑走路を共用で使用している

午前8時半、那覇基地の一角に戦闘機F15Jがけん引されてきた。まずは整備士が総がかりで機体にとりつき、継ぎ目をテープでマスキング(目張り)していく。繊細な電子機器を搭載する機体に水や洗剤の侵入を防ぐためだ。全長19・4メートルの機体の洗浄で、使ったテープは250メートル以上という。

航空自衛隊F-15J戦闘機の洗浄を行うMRO Japanの整備士ら=沖縄県那覇市の航空自衛隊那覇基地
航空自衛隊F-15J戦闘機の洗浄を行うMRO Japanの整備士ら=沖縄県那覇市の航空自衛隊那覇基地

次にホースで全体に水をかけ、洗剤を含ませたモップで汚れを拭う。もっとも高い位置にある垂直尾翼はモップの柄を長く調整。アンテナの間などの細かい部分は手作業で。最後に再び水で流し、空自隊員と機体を確認し終了。6人がかりで約2時間の作業だった。終了後、すぐに次の機体が運ばれてきた。速やかに洗浄の準備が再開され、同じ手順で作業が続いた。多い日は1日に4機を洗浄することもあるという。

洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら
洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら

民間航空機の洗浄の主な目的は美観の維持だが、戦闘機の場合は、腐食を防ぐため機体に付着した塩を洗い流すことだ。那覇基地は施設や滑走路が海に面し、塩分を含む海風が常に吹き付けるので、定期的に洗い流す必要があるという。

洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら
洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら

整備士の上原響さん(23)は「日本の空の安全を守ることに、水洗という形で力添えできてうれしく思います。携わった機体が空を飛ぶ姿に自分の仕事を実感する」と話した。

那覇基地に着陸する航空自衛隊のF-15J戦闘機。民間機と滑走路を共用で使用している
那覇基地に着陸する航空自衛隊のF-15J戦闘機。民間機と滑走路を共用で使用している

日本の空は北部、中部、西部、南西の4つの航空方面隊で守られている。那覇基地は鹿児島県奄美群島や、沖縄県先島諸島などの南西諸島の防空を担う南西航空方面隊の拠点だ。

F-15J戦闘機に水をかけて洗剤などを流すMRO Japanの整備士ら
F-15J戦闘機に水をかけて洗剤などを流すMRO Japanの整備士ら

所属する第204飛行隊と第304飛行隊では、緊急発進(スクランブル)などを任務とするF15を運用している。防衛省の発表によると昨年度、中国機やロシア機などに対して緊急発進した725回のうち南西方面航空隊が半数以上の404回を占めた。

F-15J戦闘機を洗浄するMRO Japanの整備士ら
F-15J戦闘機を洗浄するMRO Japanの整備士ら

那覇基地で洗い上げ、磨かれた機体も早速、24時間365日の任務に戻る。「洗浄を終えた機体は、そのまま任務に戻ります」。最前線に立つ自衛隊員の冷静な言葉が印象に残った。

テープでマスキングする整備士ら
テープでマスキングする整備士ら

機体の隅々まで細やかに拭う作業をつぶさに見て、師走に寺社で行われる仏像の「お身ぬぐい」を連想した。しかし、そこには、寺社にあるどこかのんびりした空気はまったくなかった。

洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら
洗浄前にF-15J戦闘機のマスキングをするMRO Japanの整備士ら
磨かれる第304飛行隊の天狗のマーク
磨かれる第304飛行隊の天狗のマーク

(写真報道局 彦野公太朗)


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