「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

見えないトラの将来像…藤川、城島、鳥谷らの入閣プランの検討を

藤原崇起オーナーにシーズン終了を報告し、記者会見する阪神・矢野監督
藤原崇起オーナーにシーズン終了を報告し、記者会見する阪神・矢野監督

阪神球団は近い将来のチーム像をどのように描いているのでしょうか。矢野燿大監督(53)は来季続投ですが、現体制を補強する意味でも、将来の〝ポスト矢野〟を準備する意味でも球団OBや外部の有能な指導者を積極的に活用すべき時期にきたと思います。日本ハムのムードを劇的に変えた新庄剛志監督(49)は阪神OBです。元メジャーリーガーのプロ野球監督は井口(ロッテ)、高津(ヤクルト)、石井一(楽天)に続き4人目。元メジャーのプロ野球監督がトレンドならば、OBには藤川球児氏(41)や城島健司氏(45)がいます。今シーズン限りでロッテで現役生活を終えた鳥谷敬氏(40)や今岡真訪氏(47)の指導者としての力量は? 彼らを積極的に登用することがタイガースの明日を築くはずです。

■刷新なしの守備コーチ陣

今さらながら…と文句を言われるのは承知の上で書きますね。阪神球団を中心に球界の動きを見つめていると、どうも釈然としない気持ちになります。阪神タイガースはどんな考えなんだろう…、どういう将来像を描いているのだろうか…と不安を抱くのです。

矢野監督は監督就任4年目となる来季も続投し、2022年に勝負の年を迎えます。「あと1年勝負」というイメージが強い中では、なかなか新しいコーチを呼べない事情は分かります。なので3日に発表された来年度のコーチングスタッフは1軍コーチ陣は今季と同じ顔触れ。2軍は元オリックスの藤井康雄氏が1・2軍巡回打撃コーチ、楽天の育成捕手コーチを務めていた野村克則氏が2軍バッテリーコーチ、中日の2軍外野守備走塁コーチを務めていた工藤隆人氏が2軍外野守備走塁コーチ、OBの江草仁貴氏が2軍投手コーチに就任しました。

今シーズン終了後、2軍のコーチは相次いで退団しました。平田勝男2軍監督の下、ウエスタン・リーグを優勝し、ファーム日本選手権にも勝って、ファーム日本一に輝きましたが、シーズンが終わると清水雅治2軍野手総合コーチ、山田勝彦2軍バッテリーコーチ、平野恵一2軍打撃コーチ、中村豊2軍外野守備走塁コーチ、高橋建育成コーチが退団。指導能力を買われて、他球団に移籍したコーチも多かったのですが、あまりにも多い退団に驚きました。この原因がどこにあるのか…チーム周辺にはさまざまな情報が流れていますが、それは今回のテーマではないので省きます。

欠員が出た2軍の指導体制を補うため、2軍のコーチを外部から4人招いたのは必然的な流れなのですが、一方で1軍のコーチ陣は〝無風〟。これにはチームの周辺で批判の声が流れていました。

「監督があと1年勝負という中では、新たに外部からコーチを呼べないのは仕方のないことかもしれないが、それでも来季、絶対に優勝したい…と思うのならば、今季も弱点だった守備力の向上、修正を目指す意味で、守備部門の担当コーチぐらいは代えると思っていた。そこも触らないのはどういうことか…」と阪神OBの一人は首をひねっていましたね。

今季のチーム失策数86は12球団ワースト。4年連続で12球団最多の失策数ですね。土のグラウンドの甲子園球場を本拠地としているため、イレギュラーバウンドが人工芝よりも多いことは配慮すべきかもしれませんが、かつてのタイガースはこれほど守乱を指摘されるチームではありませんでした。今年の春季キャンプでは巨人の現役時代、守備の名手と評価された川相昌弘氏(現巨人ファーム総監督)を臨時コーチに招聘(しょうへい)し、3週間以上に及ぶ指導を受けました。それでも守備の乱れは解消されず、V逸のひとつの原因になったといわれています。

ならば、守備部門のコーチを代えるのは必然的な流れ…のはずでしたが、来季も久慈、藤本両内野守備コーチ、筒井外野守備走塁コーチはそのままです。球団を編成する立場の人たちは果たしてチームの弱点を検証し、的確な矯正プランを練っているのだろうか…と首をひねる人は多いと思いますね。

■元メジャーリーガーを指導者に

そこは非常に大事な観点だとは思いますが、もうひとつ考えさせられるのはタイガースの将来像をイメージできない組閣だった-ということですね。

今オフは日本ハムが新庄剛志監督を誕生させ、オフの話題を独り占めしていますね。シーズン中の「中田翔の暴力問題による無期限謹慎→巨人へ説明なしの無償トレード」で暗いイメージのあった日本ハムが新庄監督登場で空気を一変させました。新庄は日本ハムのOBですが、1989年のドラフト5位で入団してきた阪神のOBです。そして、日本プロ野球界では4人目となる元メジャーリーガーの監督ですね。

阪神のOBには新庄以外にも6人の元メジャーリーガーがいます。藤川球児氏、城島健司氏、福留孝介氏、西岡剛氏、井川慶氏、藪恵壹氏です。藤川氏は引退後、解説者として素晴らしい理論を披露しています。結果論ではなく、状況に応じたプレーヤーの思考、心理状態を的確に伝えていて、いい指導者になる素質を感じますね。

また、城島氏も現在は師と仰ぐソフトバンク・王貞治球団会長の要請で球団会長付特別アドバイザーに就任しています。現役時代は2006年から09年までシアトル・マリナーズに在籍していました。06~08年の3シーズンは144試合、135試合、112試合に正捕手として出場しましたね。長いプロ野球の歴史の中で、メジャーリーグで正妻を務めた経験のある唯一無二の存在です。

彼ら元メジャーリーガーを阪神の指導者として迎え入れるタイミングがもう来ていると思うのですが、どうでしょう。藤川氏や城島氏だけではなく、今季限りでロッテで現役生活を終えた鳥谷敬氏や同じくロッテのヘッドコーチを退任した今岡真訪氏らを指導者で迎え入れる検討をすべきだったのではないでしょうか。今岡氏はもともと、阪神でコーチ経験もありますよね。

ええーっ城島? ええーっ今岡? と思われる人も多いかもしれませんが、固定観念にとらわれず、幅広く指導者の人材を検討し、将来のチーム造りを前進させることは大事です。来季の優勝を目指す裏側で次の指導体制、次のチーム造りを同時に準備することは必要不可欠と思いますね。元メジャーリーガーのプロ野球監督就任が球界のトレンドならば、阪神も藤川氏や城島氏も視野に入れて、次への道筋を築くべきです。

そうした脈絡が今回の矢野スタッフに全く感じられなかったため、チームを見る周囲からは「来年以降はどうするの?」「ポスト矢野がおらんぞ」「将来、タイガースをどんなチームにしたいのか球団の考えが見えてこない」と不安感を口にする人が多いのです。

もちろん、今さら言ってもどうなるものでもないのでしょう。すでに2022年度の矢野阪神の1、2軍スタッフは発表されています。しかし、ライバルの巨人は一度、2021年度のコーチ陣を発表後、今年の正月明けに桑田真澄氏の入閣を発表しました。人材を幅広く見て、チームの将来像にマッチする、将来像に不可欠ならば〝追加入閣〟もアリでは? そう思ってしまうぐらい、今オフのコーチ陣発表の中身には落胆しているのです。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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