【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)は13日、ロシアの民間軍事会社「ワグナー」がウクライナや中東、アフリカに傭兵(ようへい)を派遣し、人権侵害を繰り返しているとして制裁を発動した。同社に関与する8個人、3団体も対象になった。EUは声明で、ワグナーが「アフリカで有害な影響力を広げている」と警戒感を示した。
制裁対象となった8人は、ワグナーで傭兵を指揮するロシア軍参謀本部情報総局(GRU)元将校、ロシア連邦保安局(FSB)の元情報員ら。渡航禁止、資金凍結が課された。
EU声明は、ワグナーが紛争地で暴力や資源略奪を煽っていると指摘。8人はウクライナやシリア、中央アフリカなどで、拷問や殺人、非合法処刑に関与したとしている。
制裁は13日、EU外相理事会で合意した。ボレルEU外交安全保障上級代表は記者会見で、「ワグナーは、ロシアのハイブリッド戦争の表れ。各国を不安定化させている」と述べた。
ワグナーは政情不安の続くアフリカ各地に、傭兵を派遣。EUが訓練部隊を送るマリでも昨年のクーデター後、ワグナーが進出の兆しを見せていた。
ワグナーは、プーチン露大統領に近いロシア人実業家、エフゲニー・プリゴジン氏が出資している。ワグナーはロシア国内では法的登記がなく、露政府は「無関係」と主張している。EUは昨年10月、プリゴジン氏に対して制裁を科している。