<独自>北朝鮮、核・ミサイルの軍に新兵を集中投入

4、5両日に開かれた朝鮮人民軍第8回軍事教育活動家大会に臨む金正恩朝鮮労働党総書記=平壌(朝鮮中央通信=共同)
4、5両日に開かれた朝鮮人民軍第8回軍事教育活動家大会に臨む金正恩朝鮮労働党総書記=平壌(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が朝鮮人民軍で核・ミサイル兵器を扱う戦略軍に新兵を集中投入している実態が、韓国の専門家の研究で分かった。旧来の陸海空軍への配置を抑える一方、新兵を経済建設にも動員。金正日(キム・ジョンイル)朝鮮労働党総書記の死去を受け、現総書記の金正恩(キム・ジョンウン)氏が最高権力を引き継いでから間もなく10年。北朝鮮軍の日本や韓国への脅威は増大し続けている。

韓国の民間組織「北朝鮮民主化ネットワーク」の金永煥(キム・ヨンファン)研究委員が北朝鮮内の協力者を通じて入手した今年の新兵募集に関する内部情報によると、新兵の約3分の1を戦略軍に配置するという。残る3分の1をアパート建設など土木工事を担う建設団に投入。従来の陸海空軍部隊への配置は3分の1に抑えるとされる。

金正恩氏は2011年12月の軍最高司令官就任以降、戦略軍拡充に力を入れてきた。韓国国防省は20年版国防白書で、戦略軍の兵力は1万人を超え配下のミサイル旅団数を9個から13個に増やしたと明らかにした。韓国軍の政策諮問委員を務める権泰煥(クォン・テファン)韓国国防外交協会長は「北朝鮮は在来兵器では米韓に追いつけず、核・ミサイルに集中するほかない」と指摘する。

金永煥氏は、北朝鮮には経済を圧迫してきた兵力維持のための軍事費を削減したい本音があるとみる。全兵力は約128万人と推算されるが、韓国の情報機関によると、北朝鮮は今年、男性で8~9年、女性で6~7年だった兵役期間を最長で2年短縮した。金永煥氏は、実質的には100万人を割り込んでいる可能性があるとも分析する。

金正恩氏は、対米交渉で制裁解除を勝ち取り、経済建設に集中する戦略を描いてきたが、19年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳再会談が物別れに終わり、急激な兵力削減は難しくなった。新兵の経済建設への動員は、全体の兵力規模をほぼ維持したまま、経済分野に人的資源を振り向ける苦肉の策ともいえそうだ。

一方で、有事に韓国を急襲するための特殊作戦軍に約20万人を擁し、サイバー攻撃の要員も約6800人に上るとされる。北朝鮮の軍事に詳しい柳東烈(ユ・ドンヨル)韓国自由民主研究院長は「余分な兵力を経済建設に回す半面、戦略軍や特殊作戦軍には精鋭を配置するエリート主義にシフトしている」と説明する。相次ぐ実験による新型ミサイルの多様化と合わせ、日韓への軍事的脅威はむしろ高まっている。