建設アスベストで国と和解成立 最高裁で初、企業との訴訟は継続

建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんや中皮腫になったとして、九州の元建設労働者と遺族が国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟は、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で13日、国と原告との間で和解が成立した。最高裁が5月に国の賠償責任を認める統一判断を示したことを受けた形で、最高裁で和解するのは初めて。

原告弁護団によると、国が謝罪した上で、原告52人に総額約3億5千万円超を支払うとの内容。

石綿の健康被害をめぐる訴訟では、5月に最高裁が国やメーカーが賠償責任を負うとする初の統一判断を示し、国と原告団・弁護団が和解の基本合意書を交わした。

これに基づき、各地で和解協議が続いており、弁護団によると、全国約20件の同種訴訟でこれまでに国と和解が成立したのは約3割となっている。

ただ、メーカー側は、被害者が石綿を吸い込んだ現場や建材を個々に特定するのが難しいという事情もあり、争う姿勢を崩していない。今回の九州訴訟でも、賠償責任を否定しているメーカー12社に対する訴訟が今後も続く見通しだ。

この日、原告らは和解成立後、最高裁前で「国が謝罪」「企業も解決を」などと書かれた紙を掲げた。記者会見した原告弁護団事務局長の田中謙二弁護士は「提訴から10年を経て、ようやく和解となり、意義のあることだと思っている」と話した。

配管工だった夫を亡くした原告の一人、南嶋秀子さん(76)=福岡県=は、国との和解が成立したことについて「家に帰ったら仏壇の前で報告したい」としつつ、「まだ企業との戦いが続く。人の命の尊さ、被害者の苦しさ、悲しさを受け止めてほしい」と語った。

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