仏領ニューカレドニアの独立は否決 大統領、仏残留を宣言

12日、ニューカレドニア・ヌメアで住民投票の列に並ぶ市民ら(共同)
12日、ニューカレドニア・ヌメアで住民投票の列に並ぶ市民ら(共同)

【パリ=三井美奈】南太平洋にあるフランスの海外領土ニューカレドニアで12日、独立の是非を問う住民投票が行われ、96・5%の反対で独立は否決された。マクロン大統領はテレビ演説で「仏領残留」を宣言したが、独立派は投票をボイコットして再投票を要求しており、対立は続きそうだ。

ニューカレドニアは世界屈指のニッケル産出国で、仏軍が基地を置くインド太平洋の拠点。近年は経済進出を続ける中国が、独立支持派に接近しており、仏国内で投票の行方に警戒感が強まっていた。独立派は「新型コロナウイルス犠牲者への服喪期間」だとして不参加を呼びかけ、投票率は44%にとどまった。

マクロン氏は演説で、住民投票は「住民の自由意思で決めた。誇りに思う」と結果を正当化し、ニューカレドニアの医療、経済の改善に取り組むと訴えた。中国の台頭を念頭に、「インド太平洋は(地政学的な)再編で緊張が高まっている。この地域で、ニューカレドニアの新たな地位を構築する」とも述べた。独立派重鎮は仏公共ラジオで、「これは投票として成立しない」と反発した。

住民投票は今回で3度目。先住民カナック系の独立要求を受けて、1998年に政府協定が結ばれ、独立を問う投票を3度行うことが決まった。18年の第1回投票で独立支持は43%、昨年の第2回投票では47%で、いずれも否決された。投票率は共に80%を超えていた。

住民投票を前に今年9月、仏国防省傘下の「フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)」は報告書で、中国がニューカレドニアで在外中国人を通じて独立派に接近していると警告。背景には、経済権益に加え、島を中国包囲網打破の拠点とし、オーストラリアを孤立させる狙いがあると指摘していた。ニューカレドニア周辺のフィジー、バヌアツなどでは、中国が影響力を強めている。

ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合され、現在は人口約27万人。仏軍基地には約1700人の部隊が駐留する。今年9月には海上自衛隊の護衛艦が寄港し、日仏共同訓練を行った。

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