スマホかざすだけで花の名前がわかる千葉工大開発のアプリ「ハナノナ」が人気 自宅周辺で知的体験 「散歩が楽しくなった」

スマートフォンをかざすだけで花の名前を教えてくれるアプリ「ハナノナ」が人気を集めている。

千葉工業大学人工知能・ソフトウェア技術研究センターが開発した人工知能(AI)を活用したアプリで、昨年4月にリリースされた。重い図鑑を持たなくても、花の名前がわかる知的体験ができ、「散歩が楽しくなった」などユーザーからは好評を得ている。

コロナ禍の緊急事態宣言などで、自宅周辺を散歩する機会が増えたことなどで、ダウンロード数が増え、現在は40万人を超えた。大学の研究成果を披露することが目的のため、課金がない無料アプリとなっている。

身の回りにある草花のうち、770種類の花を識別できるが、今後はさらに精度を上げ、高山植物なども識別できるようにしたいという。

「ハナノナ」アプリは完全無料アプリ。気軽にダウンロードして使用することができる
「ハナノナ」アプリは完全無料アプリ。気軽にダウンロードして使用することができる

40万枚のデータを学習、770種類を識別

幼児は目にしたモノの名前を周囲の人から教わりながら覚えていくが、コンピュータにも同じようなモノを数多く見せてモノの名前を理解させることが、最新の人工知能の研究で可能になり、その研究成果を元にアプリが開発された。「画像を認識する題材として自動車や車、昆虫、魚などが候補として上がっていました。ですが、魚では釣りをする人以外、それほど身近に種類が多くないなどの理由で、だれでも目にする機会がある花を選びました」開発を担当した主席研究員の竹内彰一さんはそう話す。

植物図鑑やネットなどから花の画像をコツコツ集め、AIに学習させる作業を続けた。ひとつの花をプログラムが学習するために必要なデータ画像は約700枚と膨大で、これまで40万枚のデータ画像を深層学習させた。「大変、膨大な作業でしたが、いまでは身の回りに自然に咲いている花の1300種類のうち、770種類の花を識別できるようになりました」

自然の草花は精度が高いが、品種改良などで人間の手が加えられている栽培種の識別はかなり難しいという。

竹内彰一(たけうち・あきかず) 千葉工業大学人工知能・ソフトウェア技術研究センター副所長、主席研究員、工学博士
竹内彰一(たけうち・あきかず) 千葉工業大学人工知能・ソフトウェア技術研究センター副所長、主席研究員、工学博士

使い方は簡単、花の名前も興味深い

アプリ「ハナノナ」の使い方は簡単だ。アプリを起動するとARカメラが立ち上がる。次に「サーチモード」か「撮影モード」を選び、花にスマートフォンをかざす。すると、名前と「判定の精度」が数値(%)で表示される。

花にアプリをかざして使用する
花にアプリをかざして使用する

判定結果とともに写真撮影でき、撮った写真のシェアや保存もできる。 同時に花の名前に関連したWikipediaへのリンクも表示されるため、名前の由来など詳細な情報も得ることができる。「花の名前自体も奥深いですよ。ムラサキシキブのような文学的なものもあれば、ヘクソカズラのような面白いものまであります」

画面上に花の名前と判定の精度(%)が表示される
画面上に花の名前と判定の精度(%)が表示される

花の名をだれかに教えたくなる 専門家協力で精度高める

アプリの人気に火が付いたのは「散歩の途中に柴犬のしっぽをこのアプリで解析したところ、『ガマ』と判定されました!」というツイッター投稿だった。2020年5月15日にはApple社のApp Storeで無料アプリランキング2位になったこともあった。

「いろんな楽しみ方があると思いますが、例えば『青い花がさいていた』というよりは『ツルニチニチソウがさいていた』が言う方がわかりやすく、その花の名をだれかに教えたくなります。そういう身近な発見のツールとして活用していただければと思っています」

アプリがリリースされた当初は植物の専門家から「花の名前が違います」という指摘もあったが、現在ではそういう専門家からの協力を得て、精度を高めている。今後は高山植物や沖縄固有種などにも範囲を広げていく予定だ。

「画像保存で図鑑のようで楽しい」「子どもたちに植物に興味を」

散歩が楽しいなど、ユーザーからはさまざまな声が上がっている。

「散歩しながらお花の名前を調べていたので、答え合わせをするのに便利でとても助かっています。一瞬で花の名前が出ることと、名前付きで画像として保存でき、図鑑のようになって楽しいです」

「3歳と5歳の子供たちと、お花の名前を調べるのに使用しております。植物に興味を持つチャンスとして毎日のお散歩が楽しくなりました」

「このアプリを手にして歩いてみると、目につく花の名みんな教えてくれるものですから、今まできれい、と一言で感じるだけだった風景が、ひとつひとつの花が気になるようになります」

「ハナノナ」は完全無料アプリだが、名前が酷似している課金発生のアプリもあり、千葉工大では誤ってダウンロードしないように注意を呼びかけている。

動画の文字化を研究、監視や見守りに

「ハナノナ」は研究成果の披露であり、本来、竹内さんは動画を文字化する研究に携わっている。

「男の人が部屋に入って飲み物を2回飲んだというような人の動作の動画を文字にして一目で分かるようにすることです。そうすれば、人間が映像を見続ける必要がなくなり、例えば、店内の映像をずっと見ることがなく、『男が代金を払わずに店を出た』などの情報を瞬時に読み取れます」

ひとり暮らしのお年寄りの家に設置し、映像を見なくても「午前8時ですが、だれも起きてきません」などの情報を遠隔地で得ることができる。

「さまざまなシーンの監視や見守りなどに活用できるようになれば、多くの人がいくつもの画面を見続けるような作業の軽減に役立てると思います」と竹内さんは語る。

現在の研究テーマは「動作確認」。画面に映っている人の動作を左上に5つ表示している。数字は確信度。この例ではwalking with stick(杖をついて歩いている)が82.3%で選ばれている
現在の研究テーマは「動作確認」。画面に映っている人の動作を左上に5つ表示している。数字は確信度。この例ではwalking with stick(杖をついて歩いている)が82.3%で選ばれている

東京スカイツリーキャンパスで体験も

研究活動を通じて生まれた先端技術を応用したアトラクションゾーン「千葉工業大学東京スカイツリータウン®キャンパス」でも「ハナノナ」の分類能力を実際に体験することができる。

花を描いた写真、絵画、絵本などを中央のテーブルに置き、撮影すると、人工知能が花の種類を識別し、正面の丸いディスプレイの中の「花マップ」上に表示される。

キャンパス内ではほかにも、超巨大画面でロボットの解剖・設計図の操作を体験できる「超巨大ロボティックスクリーン」や、福島第一原子力発電所で調査活動をしている「災害対応ロボット」なども展示されている。

キャンパスは東京スカイツリータウンソラマチ8階、午前10時30分~午後6時、入場無料となっている。

※「ハナノナ」アプリのダウンロードはこちらから(無料)

提供:千葉工業大学