本庶氏と小野薬品〝和解〟基金230億円 知財人材の育成急務

基金設立を発表する小野薬品工業の相良暁社長(右)と京都大の湊長博総長=13日、京都市左京区
基金設立を発表する小野薬品工業の相良暁社長(右)と京都大の湊長博総長=13日、京都市左京区

小野薬品工業は13日、がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐる本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授との訴訟での和解に基づき、京都大に「小野薬品・本庶 記念研究基金」を設立したと発表した。小野薬品から寄付された約230億円は京大の基金の規模としては過去最高額とみられ、基礎研究と若手研究者の支援に活用されることになった。一方、本庶氏との訴訟では知的財産管理の難しさが浮き彫りとなっただけに、今後、産学連携を促すためには、両者の和解を教訓とした、知財に通じた人材の育成も急務となっている。

「わが国の産学連携の新しい形を示すことができた。京都大の教育環境を向上させるため、経済基盤の充実に貢献できる」。この日、小野薬品の相良暁社長は基金の意義を強調した。

同社は平成18年、本庶氏とオプジーボの特許使用に関するライセンス契約を締結。26年に革新的な新薬として発売されたが、その対価をめぐる法廷闘争は産業界とアカデミア(学術界)の連携の課題を示すことになった。それだけに、今年11月に成立した和解内容に基づく基金設立は今後の産学の良好な関係構築への一つの道しるべとなる。

政府も、大学が研究で得た知見や技術を社会の課題解決に生かす「社会実装」の実現を描く。そのためには、財源や製品化のノウハウを持つ企業と、先駆的な研究を進める大学などの研究機関との間の連携強化は不可欠だが、オプジーボをめぐる訴訟は、知財管理が適正にできなければ、その連携自体が簡単に揺らぐことを示した。

武田薬品工業で知財部長を務め、現在は「知的財産戦略ネットワーク」社長の秋元浩氏は「研究を行う大学と、応用研究をやりながら社会に製品を出す企業とは社会的な使命が異なる。使命の違いを理解して両者を結びつけられる人材が大学にいないと連携は難しい」と指摘する。

京都大の湊長博総長は「今の京都大には知的財産を管理できる部門がしっかりある」と強調するが、今後は各大学、研究機関がそうした機能を備え、優れた人材を確保することが急務となるだろう。秋元氏も大学で産学連携に特化した人材育成を行う必要があるとし、「雇用を保証し、若い人が専門知識を身に付けることができるポジションを用意すべきだ」と言及。産学連携の可能性を最大限に発揮するための体制づくりを求めた。(井上浩平)

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