【ロンドン=板東和正、シンガポール=森浩】先進7カ国(G7)外相会合は覇権的な海洋進出や人権抑圧などを続ける中国と、ウクライナ侵攻への懸念が強まるロシアに対抗するため連携強化の姿勢を打ち出した。一方、来年2~3月の北京冬季五輪・パラリンピックに閣僚らを派遣しない「外交的ボイコット」、露産天然ガスをドイツに輸送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の不稼働といった具体的な対策では一致できず、民主主義国家の結束に課題を残す形となった。
議長のトラス英外相は11日、外相会合の冒頭で「自由や民主主義を制限しようとする侵略国に対抗するため、力強く団結する必要がある」と訴え、名指しを避けつつ中露を牽制(けんせい)した。
外交問題に詳しい英保守党の元議員は「侵略国という強い言葉で、民主主義陣営が国際秩序を攻撃する国々に強い態度で臨む覚悟を示した」と指摘する。
外相会合で特に激しい議論が交わされたのは、中国の問題だ。インド太平洋地域での対中政策が、初めて招待された東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国を交えて討議された。
G7と良好な関係を構築するASEAN加盟国には、覇権的な海洋進出を進める中国への牽制効果を期待する声が強い。インドネシアのルトノ外相は外相会合後の会見で「海洋問題では国際法を尊重する以外に方法はない」と改めて強調、中国の動きにくぎを刺した。
2022年は、南シナ海での紛争防止に向けたASEANと中国の行動規範(COC)策定作業が大詰めを迎えそうだ。ASEANにはG7という後ろ盾を得ることで、協議が中国ペースで進むことを避けたい思惑もある。
ただ、ロイターなどによると、外相会合では中国への強硬姿勢を訴える声が相次ぐ中、参加国の一部からは「G7を『中国敵対クラブ』と思われたくはない」と中国との協調を求める意見もあった。
英国や米国、カナダなどが実施を決めた外交的ボイコットについて協議されたが、24年夏季五輪開催国のフランスや26年冬季五輪を開くイタリアが同調しなかったとみられる。G7単体の議長声明では、新疆ウイグル自治区での人権侵害などへの対応について、G7首脳会議(6月)の首脳声明から、さらに踏み込んだ文言はなかった。
緊張するウクライナ情勢をめぐっては、ロシアに対し、強い警告を発したが、経済制裁で一致した対応策は示さなかった。トラス氏は外相会合の開催直前、英BBC放送に、ウクライナへの軍事侵攻があった場合、露産天然ガスを独に輸送するノルドストリーム2の稼働計画を「進めることは問題だ」と懸念を示していた。ドイツのベーアボック外相と協議する考えを強調したが、外相会合では稼働阻止で合意できなかったとみられる。