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被害者の存在忘れずに 舘ひろし

舘ひろし
舘ひろし

「台本をいただいたときは、ぼくにできるのかなと思いました。これまでやったことのないキャラクターなので」

「あぶない刑事」など大ヒット作を多く持つベテランだが、謙虚にそう語る。NHKBSプレミアムのドラマ「生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔」で演じる深谷善輔は、元高校教師で、罪を犯した前科者の更生を支える保護司。1話では、息子を殺して服役していた小山結子(浅丘ルリ子)の担当となるも、いきなりとっぴな行動に振り回される様子が描かれた。一緒に住み始めた娘、美晴(蓮佛美沙子)との関係もしっくり来ず、保護司となったのは、過去に起きた事件がきっかけらしい。

経験のない役柄を引き受けるに至ったのは、共演の浅丘の存在が大きい。「善輔と違って、ぼくはあまり真面目じゃない。それでも、浅丘さんがよりどころとなって自分の中で(善輔の)イメージができた」と語る。撮影では「女優としての覚悟を持っている」という浅丘のどんどん変わる自由な演技に引っ張られた。

浅丘は日活の看板女優として多くの映画に出演してきた。「ぼくは東映でデビューしましたが、日活にはお世話になってきたので、一緒にいてすごく楽でした。浅丘さんから、『裕ちゃん(石原裕次郎)はこうだった』『哲ちゃん(渡哲也)はこうだったのよ』といろんな話も聞けて…」と収録時の思い出を明かす。

保護司を主人公にした社会派ヒューマンドラマということで、物語は保護司と対象者を中心に進む。保護司は対象者の側に立ち、支えていくのが役目だが、最も気をつけたのは対象者が犯した罪の陰には「必ず被害者がいる」ということだ。

善輔の対象者の過ちを「大した犯罪じゃない」と評する美晴に「小さな罪でも被害者はいるんだ」と語り掛けるせりふは、自ら台本に加えてもらったものだ。このせりふによって自身と善輔との距離が縮まり、「善輔の中に共感する部分ができた」という。

一方、彼を振り回し続ける結子も、「自分の息子を殺した私の何が更生なの」と叫び、自身の罪と更生に葛藤を抱える。結子の娘の香苗(真矢みき)は母を憎み、会おうともしない。

前途多難な人物が多く登場するドラマだが、「人間ドラマは、台本を読みこんでいくうちにその向こうに何かが見えてくる」と語る。俳優がつかんだその「何か」を共有したい。(道丸摩耶)

たち・ひろし 昭和25年生まれ、愛知県出身。51年、東映映画「暴力教室」で俳優デビュー。57年から始まったドラマ「西部警察」(テレビ朝日)の出演をきっかけに、石原プロモーションに入社。代表作に「あぶない刑事」(61年~、日本テレビ)シリーズなど。平成30年、映画「終わった人」で第42回モントリオール国際映画祭最優秀男優賞を受賞。今年4月に芸能事務所「舘プロ」を設立した。

「生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔」はNHK BSP、日曜午後10時。