私はイングリッド・バーグマンという女優が好きです。演技はもちろんですけど、まわりに縛られない、たくましいところが好きなのかもしれません。
スウェーデン出身で、若い頃から演技が上手。アメリカで成功してスターになってからは、いろんな代表作がありますね。「カサブランカ」「誰が為に鐘は鳴る」「ガス燈」「白い恐怖」「汚名」などなど。戦争もの、サスペンス、恋愛劇、どれも面白い。私は落語家だからか、なかでも好きなのはバーグマンの演じる喜劇です。
一番好きなのは「聖メリーの鐘」という映画。スター歌手ビング・クロスビーとの共演作です。クロスビーが神父として聖メリー教会に赴任してくる。その教会は学校も兼ねている。バーグマンはそこの修道女長で、神父と意見を対立させながらも一生懸命に生徒を指導している。澄ましているけど人情味のある修道女。これをバーグマンがコミカルに演じています。
そのうち、バーグマンは実生活で夫や娘を残して、イタリアの映画監督ロベルト・ロッセリーニと一緒になってしまうんですね。当時、アメリカ中からずいぶん非難されて、ハリウッドから閉め出されたそうです。私も「とんでもない連中だ、けしからん」と思いながらロッセリーニの映画を見てみたんですけど、これが結構面白いんですね。これならバーグマンが心引かれてしまうのも、なんとなく分かります。いえ、不倫はけしからんですけど。