対権威主義、戦略欠く米国 民主主義サミット

米ホワイトハウスで、オンライン形式の「民主主義サミット」を開いたバイデン大統領=9日、ワシントン(UPI=共同)
米ホワイトハウスで、オンライン形式の「民主主義サミット」を開いたバイデン大統領=9日、ワシントン(UPI=共同)

【ワシントン=渡辺浩生】民主主義陣営の切り崩しを仕掛ける中国とロシアの執拗(しつよう)さが浮き彫りとなる一方で、民主主義サミットでは、長期に及ぶ権威主義との闘いに米国の揺るぎない指導力と戦略が欠如している現実もさらけ出された。

サミット開幕前日の8日、バイデン米大統領は、ウクライナ国境沿いに展開するロシア軍の侵攻を阻止するための米軍派遣の可能性を記者団から問われ「選択肢にない」と打ち消した。この一言は、アフガニスタン混乱を招いた米軍撤収を決断してからバイデン氏につきまとう弱腰な印象を、世界の独裁主義者に改めて与えたのではないか。

バイデン氏のサミットでの演説も抽象的だった。対照的に、権威主義と命がけで闘う国や地域、個人の訴えは切実だ。「民主主義は与えられるものではない」。ウクライナのゼレンスキー大統領はツイッターにこう書き込んだ。

中国の軍事的威圧を受ける台湾の唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当政務委員(閣僚)は「台湾は常に世界で権威主義と対抗する最前線に立ってきた」と連帯を呼びかけた。

香港民主化運動の指導者の一人で英国に亡命した羅冠聡(ネイサン・ロー)氏も「アジアで最も自由とされた都市が目の前で権威主義の警察国家に陥る」体験を吐露した。「民主主義の後退は抽象論ではない」との言葉は主要国への強烈な忠告だ。

サミット招待国・地域の選別基準が不透明という批判は消えない。「米国は誰が民主的か否かを決める裁定者ではない」とゼヤ米国務次官は記者会見で釈明したが、米国は一体誰を守るのか。中露はサミットを「冷戦思考の産物」とし民主主義陣営を切り崩しにかかっている。サミット初日に発表されたニカラグアの台湾との断交はその一端にすぎない。

米政府は、権威主義国家が住民や民主活動家の監視に利用できる先端技術の輸出管理構想を発表した。少数民族弾圧やハイブリッド戦争に使われる技術の流出を制限できるが、参加に手を挙げた国は4カ国。「共同行動」には程遠い。

「今世紀を決定づける地政学的な闘いにおいて米国は設計図なき超大国だ」。米外交研究者のハル・ブランズ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で指摘している。バイデン氏は今後1年を「行動の年」としたが、欠けているのは、民主主義陣営をまとめ中露との長期戦を勝ち抜く明確な戦略である。

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