井崎脩五郎のおもしろ競馬学

競馬ファンに春が来た日

「競馬四季報のない時代って、競走馬のデビュー以来の成績は、どうやって調べてたんですか?」

若い競馬記者に聞かれて、ああ、競馬四季報がない時代は、きつかったんだよなあと思い出した。

その昔、競馬専門紙では、レースが終わると、現場から電話で成績が送られてきた。ファクシミリなどない時代。

「中山第1レース」

「はい」

「着順。4、1、3、2、6…」

「はい」

「着差。クビ、1馬身、ハナ、頭…」

「はい」

「体重。472、404、438、496…」

「はい」

こんなふうに電話で送られてくるのを、所定の用紙に書き取り、その書き取った内容を、個々の競走馬の大型カード(B4サイズ)に、手書きとガリ版で移し替えるのである。

これを毎レースやっていた。

そして、予想をつけるときは、50音順に整頓されたカードケースの中から、出走する馬のカードを抜き出し、それを参考に予想をつけて、終わるとカードケースに戻す。

ずっとこれを続けてきた。

だから、競馬四季報が1972年1月に創刊されると聞いたときは、まさに、春来るだった。

ところが、おりからの馬インフルエンザ騒動で、発行は3月まで延期。

こんな、順調ではない波乱の滑り出しだったのに、売り出すや、競馬ファンは手を伸ばした。それは、推理を楽しむ競馬ファンにとって必需品だったからである。初代の編集発行人である白井透さんは、競馬四季報の創刊号に「必ずや読者諸氏の勝ち馬推理に役立つものと思います」とお書きになっている。まさにその通りで、支持を得た。

競馬四季報は、来年1月の号で、発行丸々50年に達する。半世紀である。利益など薄いだろうによくぞ続けてくれたと、競馬ファンはみな感謝していると思う。 (競馬コラムニスト)