「ニベアに混ぜるとシミ消える」…コロナ禍影響で悪質ネット広告急増

他の製品と混ぜて使用しないよう呼び掛けるツイッターの投稿(ツイッターから)
他の製品と混ぜて使用しないよう呼び掛けるツイッターの投稿(ツイッターから)

新型コロナウイルス禍でインターネットやSNS(会員制交流サイト)を利用する機会が多くなるとともに、宣伝効果を狙った過激な表現や、消費者に誤解を与える内容の広告をめぐる苦情が増えている。「気持ち悪い」「見たくない」など不快に思う人もいる一方で、業界の自主規制には限界もあり、対策が急務となっている。

《ニベアクリームを、他の製品と混ぜて使わないでください》。自社製品の使い方をめぐり不適切なネット広告があったとして、ニベア花王(東京)が今月3日、公式ツイッターで注意喚起した。

ニベア花王によると、「ニベアクリームと〇〇を混ぜるとシミが消える」との内容の広告が「かなり前から存在していた」(担当者)。公式サイトで注意喚起を続けてきたが火消しにならず、「混ぜて効果はあるのか」との問い合わせも増えていたという。

同社はこうした広告に「一切関与していない」と強調。その上で、他の製品と混ぜる行為は「ニベアクリーム本来の特長や成分の働きなどがそこなわれてしまう可能性がある」とした。

どんな広告だったかを調べたところ、突き当たった一つが、《必見、青缶にコレを混ぜるだけ》《「青缶にコレで」シミは消える》とうたうネット広告。青缶とはニベアクリームを指し、「コレ」と混ぜればシミ消しに効果があるとの内容だ。

コレと宣伝されていたのは、化粧品開発などを手掛ける東京都内の企業のある商品だった。同社に事実関係を問い合わせたところ、担当者は「当該広告の制作には関わっていない」と否定。その上で、事実確認と調査を行うとして、同商品に関連するネット広告をすべて停止したと明かした。

「弊社製品の誤った使用方法やイメージにもつながっており、遺憾」ともした同社。担当者は「早急に調査し、厳正に対処していく」と述べ、誰がどんな意図で広告を作ったのか明らかにするとした。

不快な広告跋扈(ばっこ)の裏側にコロナ禍

インターネット広告の影響力は大きい。大手広告代理店「電通」によると国内のネット広告費は令和元年に2兆1048億円となり、初めてテレビを上回った。翌2年は、新型コロナウイルス禍に伴うデジタル化もあり2兆2290億円に。マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費合計(2兆2536億円)に迫る勢いを見せた。

ただネット広告の中には、露骨な画像や表現で消費者の関心を集めようとするものもある。

日本広告審査機構(JARO)には3年度の上半期、「化粧品」「医薬部外品」「健康食品」のネット広告に関し、計786件の苦情が寄せられた。

業種別では化粧品が437件(前年同期比242件増)、医薬部外品が225件(同37件増)。違法な表現が疑われるケースに加え、「(広告の内容が)『気持ち悪い』『不快だ』という申し立ても増えている」(担当者)という。特に鼻の角栓を強調した画像や、口臭ケア商品の口腔(こうこう)内の表現などに嫌悪感を示す意見が目立った。

背景にはコロナ禍がある。成蹊大の高橋暁子客員教授(情報リテラシー)によると、消費低迷で多くの企業が広告出稿を減らした。その影響でネット広告の入札単価が低下し、劣悪な広告がはびこるようになったという。子供が見る動画にも性的な広告などが表示され、「子供にネットを見せられないと困る親もいた」(高橋さん)。

広告はインパクトが重要だ。高橋さんは、一見不快と思える内容でも「気持ち悪いもの見たさを喚起したり、コンプレックスを持っている人を引き付けたりする効果がある」と指摘する。

悪質広告への対策も進む。大阪府警は昨年、医薬品ではない健康食品の効能をネット広告で宣伝したとする医薬品医療機器法違反容疑で、記事作成などに関わった関係者を逮捕。虚偽・誇大表示が問題視されるアフィリエイトと呼ばれる成果報酬型広告をめぐっても、消費者庁が規制強化を検討している。

JAROに寄せられた健康食品のネット広告に対する苦情も124件(前年同期比320件減)と激減しており、当局による「包囲網」が功を奏した可能性がある。(桑村大、細田裕也)