朝晴れエッセー

すいとん・12月11日

先日妻がすいとんを作ってくれたので、かつて勤務していた小学校の特別給食メニュー「すいとん」を食べたときの複雑な感動を思い出した。

まず第一に感じたのは食感が滑らかだったことだ。そのあと、懐かしさとおいしさにぐっときた。

その日の給食時「校長先生は子供の頃食べていたそうです」との放送があった。

早速、昼休み廊下で会った2年生の女の子から「おいしい物を食べていたんですね」と言われ、苦笑せざるを得なかった。

というのも、実際私が食していたのはこんな美味ではなかったからだ。

私が育った昭和20年代は日本国中が貧しく食糧難だった。農家だった私の家でさえ米は貴重で、ふだんは麦を混ぜた「割飯」を食べていた。

そして冬の寒い晩は、小麦粉を軽く練ってけんちん汁に入れた「おつけ団子」というのを食べていた。それが今でいう「すいとん」だ。

小麦粉も挽(ひ)きが粗かったのかざらっとしていて、粘りがなく崩れやすかった。

だから3度もお代わりをすると、団子が半分くらい溶けかけた「小麦粉汁」状になっていた。

それに比べ給食のすいとんは滑らかで、栄養を考えながらの彩りの良さ、なによりも出汁(だし)が効いていておいしかった。

この夜の妻のすいとんも、あのときの給食に匹敵する感慨深いおいしさであった。

山中詔八 77 栃木県野木町