火を使う工場をあえて木造で、京都の建設会社に熱視線 CO2排出削減も

木造の骨組みに覆われた自動車整備工場スペース=京都府向日市

火器を使う自動車整備工場だが、木造2階建て-。全国でも珍しいこんな建築が、京都府向日市で進んでいる。手掛けるのは、木造の商業ビルや住宅建設を手掛ける建設会社「リヴ」(同市)。高い耐火性能を持つ加工木材(集成材)を使うことで耐火性を確保、建設時に発生する二酸化炭素(CO2)量が少ないうえ、コストも低い。国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも沿う新たな建設手法として注目されている。

向日市鶏冠井(かいで)町清水。京都と大阪を結ぶ国道171号沿いのファミリーレストランや大型店、倉庫などが並ぶ一角で、木造の工場建設が進んでいる。

来年2月に完成予定の自動車整備会社「岡田自動車」の新社屋。木造2階建てで、延べ床面積約500平方メートル。うち、約200平方メートルが整備工場スペースだ。

同社は新築にあたり「環境にやさしい工場にしたい」と、木造ビル建設などを手掛けるリヴに相談。リヴは6年前に木造の本社ビル(5階建て)を建てたほか、京都市や府南部で木造商業ビル建設の実績を持つが、火器を使う工場を木造で建てるのは初めてだ。

木材は加工時に排出されるCO2が少なく「脱炭素」につながるうえ、軽量のため建物の地盤改良も一部が不要となり、建設コストを削減できる。強度や耐火性を高めた建材の開発が進んだため、5年前から集成材が一般建材として使えるようになった。

だが、火器の使用率が高い工場内では高い耐火性が必要だ。リヴでは今回、部材や工法を改めて検討し、間伐材から加工した複数枚の板材を張り合わせた「大断面集成材」を柱の一部や梁(はり)、壁面(いずれも厚さ約12センチ)に採用。外面は厚さ15ミリの石膏(せっこう)ボードで覆う仕様とし、建築基準法で求められる準耐火構造の基準をクリアした。

この集成材は火災が起きても表面しか炭化せず、内部は焼けずに残る。強度も強いため、厚みを持たせることで重いシャッターを使う間口の広い出入り口も十分支えられるという。建設時のCO2排出量は、同規模の鉄筋コンクリート造に比べて4分の1程度だ。

6年前に建てられた木造5階建てのリヴ本社ビル=京都府向日市

府内を含む国産の木材を使用したため、国産材の普及にもつながるとして、農林水産省の支援事業に認定された。リヴは「木は思っているより燃えにくく、耐久性も高い。ほとんどの建物は木造にすることが可能だということを知ってもらえたら」としている。

木造供給増も利用促進に課題

国土交通省によると、都市部で新たに建てられる3階建て以下住宅のうち、平成30年度は木造が全体の8割を占めた。半面、3階建て以下の社屋や工場を含む非住宅建物の木造率は11%と低く、4階以上はほぼ実例がない状態だ。

林野庁木材利用課は、「社屋や工場に木を使う発想がなかった」ことや、耐久年数、耐火・耐震性への不安、一般的な工法がないことによるコスト増がその要因とみる。

戦後の復興期に植栽した木が木材として使えるようになった平成15年ごろから、国産木材の供給量は増加傾向にある。しかし、少子高齢化の影響などで新規住宅の着工増加は見込めず、非住宅分野での利用促進が課題となっていた。

今年10月には、民間の建築物に国産木材の利用を促す「木材利用促進法」の改正法が施行。札幌市で高層階部分を木造にした11階建てホテルが開業するなど、木造の中高層建築物は増加傾向にある。

同課は「火器を使う工場の木造建築は全国的に珍しい。集成材など耐火に強い材質の開発や工法が進んできた結果だろう」とした上で、木材には鉄骨よりも軽量で、基礎工事も安く済むなどの利点もあると指摘。「今回のケースが非住宅分野での木材の利用促進につながることを期待したい」としている。(園田和洋)


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