くじら日記

抜群の運動能力みせるカマイルカ

イルカショーで活躍するカマイルカとトレーナー=和歌山県太地町立くじらの博物館
イルカショーで活躍するカマイルカとトレーナー=和歌山県太地町立くじらの博物館

西高東低の冬型の気圧配置となり、黒潮の恩恵で比較的温暖な和歌山県太地町にも冷たい風が吹き込み、冬らしさを感じるようになりました。クジラは断熱効果が高い分厚い脂肪層と特殊な血管構造をもつなど、優れた保温構造の体をしていますが、肺呼吸であるため、冷たい空気が体を中から冷やします。クジラの健康管理に、特に注意が必要な季節になりました。

水温調整や餌の増量、ビタミンの追加投与など、冬支度を進める中、1種、太地の冬をものともしないイルカがいます。

小型種のカマイルカで、最大体長2・5メートルほどです。熊野灘では年間を通して約20種類のクジラを観察できますが、カマイルカは2月頃、越冬のため高緯度海域から南下してくる種類です。

カマイルカは、背びれの後縁が白く、名前の通り、鎌の刃のように見えることが最大の特徴です。特に雄は、成長とともに背びれが発達し、反り曲がり、名に恥じぬ立派な鎌形になります。また、体色は、黒色系の背側と白色系の腹側で明瞭に区切られたツートンカラーで、印象的な姿形をしています。

卓越した運動能力も派手な見た目に引けをとりません。くじらの博物館では、3頭のカマイルカが、「イルカの体のつくりと能力」を紹介するイルカショーに出演しています。

尾びれの力のみで水面に立ち滑走するテールウォークや高いジャンプなど、疾走感あふれるパフォーマンスは、疾風の如(ごと)しです。3頭の愛称も、風の名が由来となり、それぞれ「はやて」(疾風)、「そよ」(そよ風)、「しなと」(科戸の風)となっています。

反応速度と敏捷(びんしょう)性の高さに定評がある一方、神経質で落ち着きのなさが弱点です。ショー中、上空にトビが飛んでいたり、水中に異物が落ちたりすると、集中できずに離れてしまうこともあります。

そんな一面をもつカマイルカのトレーニングのコツは、速く察知し、速く判断し、速く動くという、まさに疾(はや)きこと風の如くを心がけること。気合が入りすぎてステージで足を滑らすこともありますが、スピーディーでキレのあるトレーナーの動きも、ショーの見どころの一つです。

寒さも本番になりますが、熊野の山々から吹き降ろす風に負けない、3頭の風が、冬のイルカショーを歓声で温めてくれるでしょう。(和歌山県太地町立くじらの博物館副館長 稲森大樹)