【シンガポール=森浩】米国主催で9~10日開かれた「民主主義サミット」をめぐり、パキスタンは招待を受けながら参加を見送った。親密な関係にある中国がサミットに反発していることから、配慮して出席を見送ったもようだ。
パキスタン外務省は8日の声明で招待に謝意を示し、米国と連携する重要性を強調。その上で、民主主義に関する協議を「将来、適切な時期に行えると信じている」と述べ、欠席を表明した。外務省は不参加の理由を明らかにしていないが、パキスタン紙ドーンは「サミット参加は中国との関係に深刻な打撃を与えかねず、取ることのできないリスクだ」と指摘した。
中パ関係は伝統的に緊密で、中国は巨大経済圏構想「一帯一路」関連事業を通じ、総額約620億ドル(約7兆円)の投資を予定している。中国の王毅国務委員兼外相は3日、パキスタンのクレシ外相と電話会談し、サミットについて「米国は民主主義の価値を悪用し、世界に分裂をもたらそうとしている」と強く批判していた。
パキスタンは長年にわたって隣国アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンを支援しており、強い影響力を持つ。米国としては、国内にはアフガン戦争の泥沼化につながったとしてパキスタンへの不信感も根強いが、米軍撤収後のアフガン安定化のために一定の関係を保ちたい状況でもある。サミット招待は関係緊密化を目指すサインだったともいえるが当てが外れた形だ。