反物のデザインは日本の村がモチーフ

群馬県嬬恋村の名産、キャベツをモチーフにした反物
群馬県嬬恋村の名産、キャベツをモチーフにした反物

全国染職連合会が日本各地の村をモチーフにした反物を制作した。着物業界は長期的な需要の低迷に加えて、新型コロナウイルス禍で苦境に陥る。新たな需要を掘り起こそうと、今までにない斬新なデザインに挑戦した。制作には、世界各国・地域をモチーフにした着物作り「KIMONOプロジェクト」に携わった福岡県久留米市の呉服店「蝶屋」の高倉慶応社長も関わった。

各地の村をモチーフにした反物について説明する「蝶屋」の高倉慶応社長
各地の村をモチーフにした反物について説明する「蝶屋」の高倉慶応社長

「ふるさと」をテーマにした反物は、全国の35村の風土などをモチーフにして、全国染職連合会傘下の染匠が手掛けた。岩手県普代村の反物は、同村がPR材料とする「北緯40度最東端の地」を強調。村内を通り、東日本大震災で被災した三陸鉄道のレールで表現した「40」の数字を大きくデザインした。また、夏秋キャベツの産地として知られる群馬県嬬恋村の反物は、キャベツの断面を文様風に仕立てた。

一連の制作では「KIMONOプロジェクト」での経験が生きたという。同プロジェクトでは、安易に国旗や国花などをあしらうことを避け、各国・地域の自然や歴史遺産などを、着物の柄としてふさわしいようにアレンジを加えた。例えば、京友禅の老舗染元、千總(ちそう)が手掛けたブラジルの着物では、ブラジルの花や同国を代表するインコやオオハシを、着物の伝統的な意匠である花丸(はなまる)紋と鳳凰(ほうおう)に模してデザインしている。

 北緯40度上の世界最東端、岩手県普代村をモチーフにした反物
北緯40度上の世界最東端、岩手県普代村をモチーフにした反物

今回の制作でも、一般的な染め物にはなかったデザインではあるが、伝統的な意匠の型は踏襲した。高倉氏は「見過ごされてきた日本の良さこそ、私たちがデザインのリソースとして活用していくべきと思う」と説明する。

今回、村をモチーフにした反物制作のテーマに温故知新を掲げた。「先細りする業界では確実に売るために『故(ふる)きを温(たず)ね』続けてきた。そこから脱し『新しきを知る』機会を作りたかった」と強調する。職人とはデザインについて意見交換を重ね「かなり工夫が出たものに仕上がった」と評価する。

最高水準の着物を目指した「KIMONOプロジェクト」とは異なり、今回は売り物として消費者に届けることを重視した。業界全体の販売不振は、染色職人はもちろん生地職人らの廃業を招き、産業を支える土台がむしばまれている。今回制作した反物は販売価格を20~30万円程度として、女物の着物としてだけでなく、男物やシャツの生地など幅広い活用を提案していく。

高倉氏は「着物をある程度気軽に着られる環境を用意し、職人を含め業界が今後も存続していく流れを作りたい」と話している。

反物は26日まで、蝶屋で展示販売される。その後は全国染職連合会の「全国染織産地展」として東京など全国を回る。問い合わせは同社(0942・34・4711)。(中村雅和)