公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。
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「ローラとふたりの兄」10日公開
人間を優しく見つめ、人生を肯定する、すてきな作品が、フランスからやってきた。題名通り、主人公は弁護士のローラ(リュディヴィーヌ・サニエ)と2人の兄。映画は、解体業者の次兄、ピエール(ジョゼ・ガルシア)が、眼鏡士の長兄、ブノワ(ジャン=ポール・ルーヴ)の3度目の結婚式に駆けつけるところから始まる。けんかは絶えないが、深く思い合う兄妹の関係性など、必要なことは冒頭ですべて説明し、この後の出来事への伏線も張り巡らせる。
恋愛、結婚、家族…。エスプリを薬味に、映画は3人の日常を淡々と描く。もっぱら2人の兄が推進役を務めるが、終盤で突然、焦点はローラに当たる。あの設定、場面は、ここにつながっていたのか。観客は胸をつかれ、膝から崩れ落ちるローラの姿に涙を禁じ得ないだろう。
監督は、長兄役も兼ねるルーヴ。映画は、終盤で一気に伏線を回収。だれもが心に傷を負い、それでも再起するのだと静かに、柔らかく、しかしはっきりと語りかけてくる。
10日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、17日から大阪・シネ・リーブル梅田などで全国順次公開。1時間45分。(健)
「クナシリ」公開中
日本がロシアに返還を要求している北方領土の国後(くなしり)島の現状を捉えたドキュメンタリー映画。北海道の沖合からわずか16キロに位置するが、日本人がなかなか直接知ることができない島の厳しい暮らしぶりや島民たちの本音が収められている。
勝者のイメージを国民に植え付けてきた旧ソ連時代から、島全体の時間が止まっているように映る。監督は、旧ソ連(現ベラルーシ)出身で現在フランスを拠点に活動するウラジーミル・コズロフ。仏映画。監督は北方領土を捉えた2作目として、根室での撮影を計画しているという。
東京・シアター・イメージフォーラムで公開中、大阪・第七藝術劇場などでも順次公開予定。1時間14分。(啓)