【ロンドン=板東和正】弁護士や人権専門家らによる英国の非政府組織「ウイグル法廷」は9日、報告書を発表し、中国政府による新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。習近平国家主席や中国共産党の高官らが人権侵害に関して「主要な責任を負っていると確信している」とも強調した。
英BBC放送や米CCNテレビによると、ウイグル法廷は自治区での人権侵害を検証するため、ウイグル人活動家の呼びかけで英弁護士らが2020年に設立した。同法廷は今年、ロンドンで複数回の公聴会を実施し、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」のエイドリアン・ゼンツ上級研究員ら専門家10人以上の証言を得て報告書を作成した。
ウイグル法廷は9日の報告書で、「(ウイグル自治区での)レイプや拷問など発生した可能性のある個々の犯罪行為に関して、習氏らが詳細に知った上で実行されたわけではない」としつつ、習氏らが推進した政策や演説の「直接的な結果として起こったものだと確信している」と責任を問うた。
報告書に法的拘束力はないが、中国の人権侵害を監視する国際議員連盟設立を主導した英保守党のダンカンスミス元党首らがウイグル法廷の判断を支持しており、将来的に英政府の対中政策に影響を与える可能性がある。