「買い物を喜びに」知的障害者向けコインケースを開発

知的障害者の買い物を支援するコインケースを手にする前川哲弥さん=7日午後、東京都大田区(内田優作撮影)
知的障害者の買い物を支援するコインケースを手にする前川哲弥さん=7日午後、東京都大田区(内田優作撮影)

知的障害者の多くが、自力で買い物できない―。そんな状況を変えるコインケースを、NPO法人「ユメソダテ」(東京都世田谷区)が開発した。普及に向けたクラウドファンディングも始まり、関係者は「おっくうになりがちな買い物に前向きになれるのでは」と期待している。

クラウドファンディングは11月22日に開始し、4日目で当初の目標額の100万円を達成した。目標額を350万円に変えて現在も継続中で、9日時点で約180人から約150万円の支援が寄せられている。

開発のきっかけは、ユメソダテ理事長の前川哲弥さん(59)が、知的障害を持つ長男(18)が買い物の際に支払額を計算できないのに気付いたことだった。知的障害者の中には、見た数字の大きさは理解できるものの硬貨の数字とひもづけることができず、必要な額の硬貨を出せない人が少なくない。昨年、前川さんらが知的障害を持つ約40人に調査したところ、9割近くが数字の大小を理解できると答えた半面、自力で買い物できると答えた人は約5割にとどまった。

多くは周囲の人が補充した電子マネーやプリペイドカードで買い物をしているが、家族の高齢化などから支援にも限界がある。中には計算の必要がない千円札だけを使い、釣銭をため込む人もいるという。

前川さんらは硬貨の違いと枚数が一目で分かるようになれば、金額の計算もできるようになると考え、実証実験で裏付けた。昨年秋から試作を始め、11月にコインケースが完成した。

コインケースは、500円から1円までの硬貨がそれぞれの単位に合わせて入るようになっている。5円の場合は10円に桁が変わる2枚まで、10円の場合は100円になる10枚まで入る作り。硬貨の数が容易に分かり、計算もしやすい。通常のコインケースと比べて縦約8センチ、横約3センチと小さく、ポケットに容易に入る持ち運びやすさも特徴だ。

「レジの店員さんが支払いを手伝おうとしても、財布に手を突っ込むのは抵抗がある。コインケースなら手伝いやすい」(前川さん)という期待もある。

寄付した保護者や教育関係者らからは「息子が将来困らなくなる、と希望の光が差した」「実際に学習で使いたい」などの声が寄せられた。前川さんは「1人の買い物は『できない』と思われがちだが、練習をすればゆっくりでも確実に成長できる。本人の喜びにもつながり、単にお金を使えるようになる以上の効果があるはずだ」と強調した。

クラウド・ファンディングの応募は来年1月14日まで。終了後は約1千個を製作し、支援者のほか、希望する特別支援学校や団体などに贈る予定だ。問い合わせはメール(maekawa@yume-sodate.com)で。(内田優作)