中国政府による新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権弾圧は日本で暮らすウイグル人にも暗い影を落としている。声を上げれば故郷の家族や親族に危害が及ぶ恐れがあり、表立っては何もできない。北京冬季五輪・パラリンピックの外交的ボイコットが広がる中、「人権侵害に対して、日本も強いメッセージを送ってほしい」と同調を訴える。
「親戚や知り合い20人近くが強制収容所に送られ、半数以上の消息が分からない」。ウイグル出身で関西在住の30代男性がこう打ち明けた。約10年前に来日し日本国籍を取得。会社勤めをしながら、中国への怒りと恐怖を押し殺して生活している。
大きな変化を感じたのは約4年前。ウイグルにいる高校や大学時代の友人たちと連絡がつかなくなった。後になって、現地では外国在住者と連絡を取り合うこと自体が収容の理由になりうると知った。
「自分の存在が、友人に何らかの害を与えていたかもしれない」。そんな自責の念にとらわれると、仕事が手につかなくなった。
電話で交わしていたイスラム教徒同士の日常のあいさつも、向こうにいる家族は数年前から口にしなくなった。当局による監視が強まったからだ。「SNS(会員制交流サイト)のビデオ通話は筒抜け。家族と本当のことを話すことはできない」。毎日5回のお祈りを欠かさなかった敬虔(けいけん)なイスラム教徒の父親も、その習慣をやめてしまった。