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生きもの好〝紀〟心

博物館でなぜ「標本」を作るの?㊦生きた証し示す財産

和歌山県立自然博物館による標本寄贈を求めるイラスト=国島大河学芸員提供
和歌山県立自然博物館による標本寄贈を求めるイラスト=国島大河学芸員提供

自然史系博物館における標本の意義と活用についての続きです。前回、博物館に収蔵されている標本の多くは、いわゆる「普通種」であることをお伝えしました。そう聞くと「たくさんいる種の標本を集めてどうするの?」という疑問が浮かぶかもしれません。確かに、珍しい生き物を残した方がよさそうだと思いますよね。しかし、普通種も含めて標本は、それぞれの年代あるいは特定の場所に生息・生育した生き物の存在を担保する貴重な証拠であり、財産なのです。

今は珍しくない生き物でも、人間活動の影響が生態系を脅かし続けている現状では50年後、100年後には絶滅している可能性もあります。リョコウバトなど悲しい実例も枚挙にいとまがありません。

もちろん望ましくはありませんが、そうなってしまったときに標本が残っていれば、長い歴史の中で生存してきた生物の営みを後世に残し、その過ちを繰り返さぬよう警鐘を鳴らすことができます。従って、希少種や普通種といった現状によらず、100年後あるいはより後世への貢献を見据えて、網羅的に標本を収蔵・保管することが博物館の重要な役割の一つだといえます。

さらに、近年は標本に対する遺伝学的な手法や研究も発展してきています。昨今の科学技術の進歩を鑑みると、例えば現状では採集した年代や場所がわからない標本でも、将来的に活用できる可能性もあるため、古い標本をきちんと保管・管理する重要性がさらに高まっているといえるでしょう。

ところで、当館に収蔵されている標本はどのように集められているのでしょうか? もちろん学芸員が自ら採集に出向き、集めているものもあります。しかし、当館に収蔵されているものの多くは寄贈されたものなのです。和歌山県はとても広く、学芸員だけで網羅的に標本を集めるのにはどうしても限界がありますので、広く一般市民の皆さんの力もお借りしています。

特に、近年は市民からの持ち込みによって貴重な標本や情報を得られた事例が増えており、網羅的な資料収集には皆さんの協力が不可欠であることを再認識しました。以前の「好〝紀〟心」でご紹介したキテンハタと脇本くんのエピソードはその典型的な例の一つです。また、ご自宅に古い貴重な標本が飾られていることもあり、処分される前にご寄贈いただいた例もあります。

当館では標本の寄贈を歓迎しておりますので、野外で生物を捕まえたり岩石や化石を拾ったりした際、あるいは標本類の処分に困った際はぜひ当館へご連絡ください。一緒に和歌山の豊かな自然や生物多様性を後世に残す、お手伝いをしてみませんか?(和歌山県立自然博物館 国島大河)