「仕事すべてひっくるめての賞」 小川洋子さん、松岡和子さん万感 第69回菊池寛賞贈呈式

第69回菊池寛賞の贈呈式でスピーチする作家の小川洋子さん(日本文学振興会提供)
第69回菊池寛賞の贈呈式でスピーチする作家の小川洋子さん(日本文学振興会提供)

優れた文化活動に贈られる第69回菊池寛賞の贈呈式が東京都内で行われ、作家の小川洋子さん(59)、翻訳家で演劇評論家の松岡和子さん(79)が喜びや抱負を語った。

「これまでの自分の仕事すべてをひっくるめて賞をいただくのは初めて」と喜んだ小川さん。30年余りの創作活動を通して、静謐(せいひつ)で美しい小説世界を築き上げ海外でも評価は高い。

小川さんは自身の歩みを「毎日がスランプ。1行1行がスランプ」と形容しながらも、「不思議なことに絶望したことがない。『もう駄目だ』というところで編集者や文学の神が、私が気づかなかった所に、ほのかな光を当てて書くべきものを指し示してくれた。それは神秘的な体験で、自分以外の何者かが書いたような感触を覚える」と文学の奥深さに思いをはせていた。

一方、松岡さんは、日本人で3人目となるシェークスピア戯曲の個人全訳を今年完結させたことが評価された。「翻訳は原文がないと成り立たない」という松岡さんは、「どういう日本語にしたら一番聞く方、読む方の心が動くか。すばらしい言葉で常に私を搔(か)き立ててくれた」と文豪シェークスピアへの感謝の言葉も忘れなかった。

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