主張

日大の再生 組織統治の欠如に猛省を

日本大学付属病院をめぐる背任事件で、日大はようやく被害届を東京地検特捜部に提出した。

所得税法違反の疑いで逮捕された前理事長の田中英寿容疑者はこれまで「日大に損失は出ていない」として被害届の提出を拒んでいた。確かに田中容疑者は損をしていない。前理事長が大学と一体化し、私物化していたことを象徴するやり取りともいえた。

すでに背任罪で起訴された元理事、井ノ口忠男被告への起訴事実によれば、日大の損失は甚大だったはずだ。大学側が田中容疑者の逮捕を経なければ被害届を出せなかったことも、理事会の形骸化を象徴した。

日大は10日、一連の事件発覚後初めて会見を開く。末松信介文部科学相の「会見を行い、社会に恥じることのないよう対応するのが筋だ」との指摘を受けたもので、自主的判断とはいえない。

会見には田中容疑者の辞任を受けて理事長を兼務する加藤直人学長が出席予定だが、約30人の理事はすでに全員、辞意を明らかにしている。ワンマン体制を支え、黙認し、当面は職務を続行する彼らが日大再生への道筋を具体的に語ることができなければ、学生、OBらの不満は増大するだけだ。

まずはこれまでの組織統治の欠如に真摯(しんし)な反省の弁を述べ、背任事件の主舞台となった別会社「日大事業部」の解体など、目に見える形の改革を提示することだ。

日大は全国最多7万人超の学生が在籍するマンモス大学だが、アメリカンフットボール部員の危険タックル問題など数々の不祥事に際しても常に説明責任を果たさず、学内外の批判も強引に押さえ込んできた。そのひずみが限界を超えたのが今回の事件だったといえるだろう。

文科省の有識者会議は私立学校法に基づき学校運営の諮問機関として設置されている「評議員会」の権限を大幅に拡充し、「最高監督・議決機関」として理事の選任・解任権を持たせるなどの報告書をまとめた。評議員は学外から起用し、理事会による選任・解任は認めない。

私大側は「建学の精神を瓦解(がかい)させる」などと反対するが、日大のような事例が報告書に説得力を持たせている。学問・教育の自由を謳(うた)うならまず、最高学府にふさわしい組織を、自ら構築しなくてはならない。