勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(366)

古巣復帰 門田、覚悟のダイエー移籍

重いバットで重いボールを打ち込むダイエーの門田
重いバットで重いボールを打ち込むダイエーの門田

■勇者の物語(365)

門田の処遇が決まった。本人の希望通りの「自由契約」である。

10月15日、大阪・難波のサウスタワーホテル。金屛風(びょうぶ)の前に座った門田はこう心境を語った。

「自由契約にしてもらいました。選手生活の終着点は、生まれ育ったホークス、血みどろになって頑張ったホークスでやりたい―と希望しました」

門田は言葉を選び、ゆっくりと、かみしめるように話す。

「この間、心は揺れました。1カ月前には〝やめよう〟という気持ちが大きかった。それが、もう一度戦いたい―に変わった。もし、自由契約がダメだったらユニホームを脱ぐつもりでした」

故障で働いていない選手ならともかく、門田はこの年(平成2年)打率・2割8分、31本塁打、91打点をマークした。来季から広い球場に移転し、いかに戦力的に使いづらいとはいえ「自由契約」はあり得ない。球団の温情である。

「行くからには〝主砲〟として行く。来年、ボクが本塁打30本を切ってダメなら、腹をくくることも確かです」と門田は言い切った。

ダイエーに入団した門田にはすさまじい気迫を感じた。実はこの時期、筆者は田淵ダイエーの担当記者として福岡へ赴任していた。

キャンプからオープン戦、門田は別メニューでのトレーニング。ウエートトレも打ち込みも室内で行われ、なかなか記者の目に触れなかった。ある日、珍しくグラウンドで門田がトスバッティングを行った。コーチのトスするボールをネットに向かって打ち込むのだ。

音が違う。普通の選手なら「カシュッ」と軽い音。ところが門田の音は「ガツッ」と重い。なぜだろう…。ようく見るとトスされるボールの縫いひもが「黒」になっている。普通は「赤」だ。

練習が終わってコーチに尋ねた。すると「持ってみろ」とボールを手渡された。ズシーンと重い。普通のボールの倍の重さだ。

「門田はこのボールを1キロ以上の重いバットで打ち込んでるんや。普通の選手なら体が潰れとるで」

結果的に門田の肉体は悲鳴をあげた。1年目、打率2割6分4厘、18本塁打、66打点。そして2年目のオフ、ユニホームを脱いだ。(敬称略)

■勇者の物語(367)