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(214)独りぼっちは抑鬱のリスク

近年の調査によると、高齢者のいる世帯の4分の1は独居、すなわち高齢者の1人暮らしで、また3分の1は高齢の夫婦のみとなっています。高齢でも仕事を続けているなど、社会とのつながりが保てていればそう心配することもないのでしょう。しかし、人と会うことも、話すこともほとんどないというような生活は心身の不調をきたすことに繫(つな)がりかねません。

私のクリニックに通院している高齢の患者さんにも1人暮らしや夫婦だけで暮らしている方がたくさんいます。日本の高齢者の3人に1人は親しい友人がいないと答えており、独居や夫婦だけで暮らしていれば孤独と感じる可能性は高くなるでしょう。高齢者の鬱や自殺の多さが問題となっていますが、孤独感が抑鬱と関係してくることが研究で示されています。

これは50歳以上の英国人約4千人を12年経過観察したもので、孤独感と抑鬱の関係を調べたものです。孤独感と抑鬱はどちらも質問に対し自記式で回答するもので調査しています。結果は孤独感が強い人は、抑鬱の症状が強くなりやすいことが示されています。性別や年齢、社会的状況などといった抑鬱と関係しそうな事柄の影響を除いた後にもこの関係は見られています。孤独感は長期間にわたり抑鬱の発症に影響を及ぼしていて、この研究では孤独感は鬱症状の発症の11~18%に寄与すると見積もられています。

孤独感は周囲とのつながりの喪失感や、理解してもらえているという感覚の欠如などと関係しています。そしてこれは物事を良くない方向にとらえる傾向や、自己肯定感の欠如へとつながり、最終的に抑鬱へ至ると考えられます。孤独感はまたストレス応答に関与するホルモンへも影響を及ぼしますが、それも抑鬱の発症を増やす可能性があります。このようにして孤独感は抑鬱をもたらすと考えられ、そのため孤独を解消することでかなりの数の高齢者の抑鬱が防げると考えられます。孤独はまた認知症とも関係してきます。

高齢者が社会とのつながりや有意義な人間関係を保つためにさまざまな機会を作り出すことや、孤独に陥っている人を救い出すことは、行政が主導して地域ぐるみで行うべきものでしょう。気づいたら独りぼっちだったということがないように、さまざまな活動に参加し、仲間や友人といった関係性を大事にしていくという姿勢も大事なのだと思います。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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