【ソウル=時吉達也】与野党2候補による事実上の一騎打ちの構図となった韓国大統領選は、来年3月9日の投開票まで残り3カ月となった。ともに文在寅(ムン・ジェイン)現政権との違いを強調する戦略で中道層への浸透を図るが、国政経験のない〝新人〟の2氏はそれぞれ組織内トラブルの収拾に追われ、政策論争は深まっていない。対日政策では方向性の違いが鮮明になっており、選挙の行方は改善の兆しがみえない日韓関係にも影響を与えそうだ。
「コロナで国がどれだけ支出したのか。もう、すずめの涙ですよ」。新型コロナウイルス問題をめぐり6日、「政府がまったく責任を果たしていない」と文政権の経済対策を正面から批判したのは野党ではなく、政権与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道(キョンギド)知事だった。
李氏が身内であるはずの文政権との差別化を図るのは、政権交代を求める世論が日増しに広がっていることが背景にある。今年8月の調査では「政権交代」を求める声(47%)が「政権維持」(39%)を8ポイント上回っていたのに対し、11月には両者の差が3倍の24ポイントに拡大。文氏がこれまで成果を強調してきたコロナ防疫をめぐる状況が悪化していることも影響し、「政権継承」を強調する候補がいない異例の選挙戦となる見通しだ。