栃木県足利市の北部中山間地域・名草地区をもり立てようと、あしかが輝き大使でとちぎ未来大使の中国料理シェフ、薮崎友宏さん(48)らが地元のショウガなどの農産物を使った鍋の素「名草生姜(しょうが)の薬膳火鍋」(1パック1320円)を開発した。12月10日から販売する。ショウガの風味を生かしたスパイシーさが売りで、地元の新たな名物に育てていきたい考えだ。
薮崎さんは東京都内の中国料理店「南青山 Essence」のオーナーシェフで、今年の第12回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」でシルバー賞受賞。市内の農園で食材となる野菜を栽培している。
昨年、同市はじめ県内食材を活用したブランド「あしかがヌーボー」を立ち上げ、第1弾の「足利マール牛肉まん」は発売3カ月で3千個を売り上げるなど好評だった。今回の鍋の素は同ブランドの第2弾だ。
名草地区は里山に囲まれたのどかな山村。人口約1600人で、高齢化率42・7%は市内ワースト1。一方で、豊かな自然環境などにひかれ、古民家を利用した県外からの移住者も目立ち始めている。
同市は今年度から令和5年度までの3カ年、名草地区を対象に地域資源を生かした持続可能な地域づくりを目的に里山地域活性化事業をスタート。地元農産物を活用した新名物開発について、薮崎さんに業務委託の形で依頼していた。
薮崎さんは地元のショウガやトウガラシの活用を聞き、即座に火鍋を思いついた。名草地区は古くからショウガ作りで知られ、室町時代、足利尊氏の重臣が紀州(和歌山県)から足利に領地替えになった際、ショウガを持ち込み、同地区で栽培をはじめたとされる。現在も農家数軒が生産し、漬物を売り歩くショウガ売りも健在という。
開発した鍋の素はウコンやマグマ塩なども隠し味に入れた。スパイスが効き、「結構辛めになっている」(薮崎さん)が、火鍋だけに全身が温まり、血液の循環も良くなるという。割高な国内産食材のため、コストを下げるのに苦労したという。地元産のシイタケ、ワイン、地元のスパイス工場の協力も得て、完成にこぎつけた。
地域おこし協力隊員の後藤芳枝さんをはじめ、宇都宮大の食生活学研究室が試食するなど開発協力し、足利出身のデザイナー、玉村浩一さんがパッケージを手掛け、製造販売も地元の「ふ~でゅ~す」が担当した。
薮崎さんは「地元のショウガをふんだんに使用した。辛く仕上げたが、生卵に絡めて食べればマイルドな味わいになるはず」と話している。問い合わせは「ふ~でゅ~す」(0284・55・5930)。(川岸等)