立憲民主党の泉健太代表は8日の衆院本会議で、新体制発足後初の代表質問に臨んだ。泉氏は17項目の政策提案を行い、「批判ばかり」と指摘される党のイメージを政策立案型に転換させる姿勢を明確にした。政権追及の色を薄めただけに迫力を欠いたが、無難なデビューとなった。
代表質問は岸田文雄首相の所信表明演説に対して行われた。泉氏は誕生日が同じ7月29日の自民党総裁の首相と共産党の志位和夫委員長の名前を挙げ、「2人のど真ん中で日本に必要なことを遠慮せず言う」と述べた。先の衆院選で立民は共産と連携し「立憲共産党」とも揶揄された。泉氏はこれを修正し、「中道」の立ち位置を印象付けたいようだ。
泉氏は、新型コロナウイルス対策の遅れや混乱を指摘し、令和3年度補正予算案も「提出が遅すぎた」と批判した一方で、「提案がある」と連発し、首相に政策を投げかけた。
18歳以下に現金とクーポンで10万円相当を給付する政府の施策をめぐっては全額現金給付などを提案。国会議員の文書通信交通滞在費に関しては日割支給、使途公開、年間残額の国庫返納などを盛り込んだ立民提出法案への賛同を求めた。
外交・安全保障の分野では人権侵害に関わった他国の高官らに制裁を科す「人権侵害制裁法(日本版マグニツキー法)」の検討を促したほか、経済安全保障の必要性も強調した。憲法改正については「現行憲法によって国民の自由と権利が守られている」などと慎重姿勢を示した。
代表質問終了後、泉氏は記者団に「国民に立民が本来持っている政策重視、政策立案型の姿を知ってもらえた」と胸を張った。
一方、この日、質問に立った西村智奈美幹事長は、泉氏に比べ対決姿勢を強めた。
政府が慎重な同性婚制度に関して「結婚を認めないことは不当な差別ではないか」と批判。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設見直しも訴えた。皇位継承に関しては「女性・女系天皇の在り方も含めた検討を行うべきだ」と主張した。支持層の幅を広げたい泉氏と、リベラル的で政権批判を重視する従来の支持層を固める西村氏という役割分担がありそうだ。
ただ、この日の首相の答弁は所信表明演説の域を出ず、新たなスタイルが党勢回復につながるのかが今後の焦点となる。(沢田大典)