製造プラントの異常予知、AI使い高度化 東芝が新システム

AIを活用した異常予兆検知の実証実験を行っている三川発電所(福岡県大牟田市)の設備(東芝エネルギーシステムズ提供)
AIを活用した異常予兆検知の実証実験を行っている三川発電所(福岡県大牟田市)の設備(東芝エネルギーシステムズ提供)

人工知能(AI)やデータ解析技術の進展で、プラント(生産設備)の異常の予兆を検知するシステムが高度化してきた。人手に頼らなくても正常な状態との比較が瞬時にできるレベルに達しており、発電所や製鉄所などで導入が拡大している。製造業の現場では人材難が解消されておらず、最新のデジタル技術を使い、こうした課題の解決に乗り出している。

作業員不在でも精度高い監視を実現

東芝は7日、大規模プラントの異常予兆を高精度で検知するAIを開発したと発表。プラント内の個々の機器に取り付けた数千個のセンサーで自動取得した稼働中の値と、AIであらかじめ解析した正常時の値との誤差から、瞬時に異常の予兆を把握する。

数百~数千個のセンサーの正常時の値をまとめて予測し、「数多くのセンサー間の関係性の崩れからも異常を検知できるようにした」(研究開発センター知能化システム研究所の内藤晋上席研究員)。

プラントは数多くの機器で構成されている。しかも機器は同時に稼働しているため値にぶれが生じやすく、取得値の分析だけでは異常を検知できないケースも少なくなかった。作業員が画面監視も行っているため大きなトラブルには発展していないが、システムによる異常の検知は正確性を欠いていた。

今回のAIの開発で、作業員が不在でも精度の高い監視を実現できる。現在、東芝の関連会社シグマパワー有明(福岡県大牟田市)が運営する三川発電所(同)で実証実験を行っており、今年度中にプラント向けでの商用化を目指す。

センサー数が100程度の水処理試験設備への展開も視野に入れる。

JFE、トラブル年間50時間減

鉄鋼大手のJFEスチールは9月、鋼材への加工を担う全地区の熱延工場に、ビッグデータの解析技術を使って設備異常の予兆を検知するシステムを導入した。電流や圧力、流量、温度、振動などの膨大なデータを網羅的に解析する。正常時の基準値からの外れ度合いを異常値として指標化することで、過去に実際に発生したトラブルだけではなく、想定外のトラブルも未然に防げる。

既に効果が出ており、平成30年度に先行導入した西日本製鉄所の倉敷地区(岡山県倉敷市)では、年間50時間以上(生産量3万トン以上)相当のトラブルを減らせたという。今後は、製銑(せいせん)や製鋼など他の生産工程にも拡大する方針だ。

日本製鉄もNECと共同で、東日本製鉄所の君津地区(千葉県君津市)の熱延工場でAIを活用した異常予測システムを運用している。また関西電力も9月、制御・計測機器などを手掛けるアズビルと、AIを活用した火力発電所の設備異常検知システムの共同開発に基本合意し、来年度中の運用を目指している。

プラントの監視は熟練社員の知見に頼ることも多かったが、各企業は高齢化や人手不足の問題を抱える。最新のデジタル技術を使って課題を解決する動きは、今後も加速しそうだ。(黄金崎元)