ワクチン証明、都アプリ登録は3% 「周知を」

新型コロナウイルス「オミクロン株」の感染拡大が懸念される中、マイナンバーカードを使ったスマートフォンによるワクチン接種の電子証明書発行を20日から始めると政府が表明するなど、「接種証明」を活用しようという動きが広がっている。ただ、東京都が先駆けて運用している接種証明アプリの登録は低調で、飲食店でも確認の手間などがあり、思うように進んでいない。専門家は普及すれば効果が見込めるとして、周知の必要性を強調する。

わずか3%

ワクチン接種記録を登録する「TOKYOワクションアプリ」の運用を11月1日に始めた東京都。今月1日からは、十分な感染防止対策を講じていると認証された飲食店では、1テーブル9人以上での利用の場合は接種証明の提示が求められ、都は同アプリの活用を想定する。

スマホを利用した国のワクチン接種証明書発行に先駆けた東京版「ワクチンパスポート」で先月22日からは都民以外も利用可能とした。もっとも、登録者数は今月7日時点で約32万人。2回の接種を終えた都民の3%程度にとどまる。

都民の年代別のワクチン接種率(2回目接種済み、5日時点)は、40代以上の中高年層がいずれも8割を超えているのに対し、30代以下の若年層は最も高い30代が約75・4%。都の担当者は「若い世代の接種が進めば、登録がもう少し広がるのではないか」とする。

登録者は飲食店やホテルなどの協賛事業者が提供する特典を受けられる仕組みだが、現在、特典を提供しているのは都内の2300店ほど。担当者は「まだ周知しきれていない」とし、協賛事業者の拡大も急ぐ。

確認に手間

東京・新橋の居酒屋「根室食堂」では、9人以上の客から予約が入った場合、事前に接種証明の提示が必要だと伝え、当日、店で確認している。オーナーの平山徳治さん(49)は「確認しないでクラスター(感染者集団)が発生したら、うちみたいな店は足をすくわれてしまうから」と話す。

接種証明は紙で提示する客がほとんど。ただ、夜間の混雑した時間帯などに予約せず来店した団体客には対応に苦慮することもあるという。「9人以上は接種証明が必要だという都の方針を知らない客も多く、周知が足りていないのではないか」とこぼした。

一方、新橋駅近くの和食居酒屋の男性店長(43)は「年代問わず、大人数の来店時は提示が必要だと知らない人が多い。接種証明を持ち歩くという文化はまだ浸透していないように感じる」と語る。

オミクロン株のニュースの影響か、11月と比べて先週から客足が少し減ってきているといい「せっかく来てくれた客に『証明がないと入れません』と強く言えない」と打ち明けた。

効果高い

ただ、接種証明が実際に活用できれば、その効果は高いとする声は多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「電子化の課題はあるが、経済活動と感染防止を両立するためにはワクチン検査パッケージは非常に有効」と指摘する。

浸透していない背景としては「国が一斉に音頭を取って行わないことが考えられる」とする一方、海外のように義務化することは日本にはなじまないとし「国が腰を据えて国民に丁寧に説明し続ける必要がある」と強調。「感染が広がると、緊急事態宣言に逆戻りする可能性もある。接種証明の利便性を高める上でも、早期に電子化を普及させることが重要だ」と述べた。

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