「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

正妻・梅野残留は追い風か逆風か…鍵を握る矢野采配

FAを行使せず阪神残留が決まった梅野隆太郎
FAを行使せず阪神残留が決まった梅野隆太郎

阪神・矢野燿大監督(53)は梅野残留の大朗報をチームの〝追い風〟にできるのか…。来季の起用法次第では〝逆風〟に風向きが変わる可能性もあります。ロベルト・スアレス投手(30)が退団し、サンディエゴ・パドレスに単年契約、年俸約7億9千万円で移籍しました。守護神流出の大激痛の続編は国内フリーエージェント(FA)権を取得していた梅野隆太郎捕手(30)の国内他球団への流出か…と心配されましたが、梅野は3日にFA権を行使せず残留することを発表しました。本来なら喜ぶべき話ですが、果たして残留する梅野を来季、指揮官は3・25シーズン開幕から正妻で起用するのでしょうか。現時点では梅野残留を喜んでばかりではいられない…と心配しますね。

■スアレス退団は、見事な〝経営判断〟

いや~本題に入る前にまたまた手前みそ…を書かせていただきます。えっ⁉ またしょうもない事、書くんかい! と言われるでしょうが…笑。

阪神のライバル、巨人の菅野智之投手(32)が今季取得した海外FA権を行使せず、残留することを5日に発表しました。昨オフはポスティングシステムを利用して米大リーグへの移籍を目指しましたが、希望する条件が提示されずチームに残留。その際に、本人の希望で1年契約を結んでいました。今季は開幕直後から故障による離脱を繰り返して、選出されていた東京五輪の日本代表も辞退。後半戦に調子を上げたものの、19試合に登板して6勝7敗、防御率3・19でした。

不肖、ワタクシは11月12日付の産経新聞夕刊「鬼筆のスポ魂」で『巨人・菅野、今オフはFA封印…自身追い込み「絶対エース」奪回へ』と書きました。ズバリ的中ですね。それがどうした? いやいや、もう新聞記者はニュースが栄養剤なんですよ。こうやって書いたことが当たると、万馬券が当たって、財布が膨らむよりうれしいんです(ウソつけ? 菊花賞で万券取った時はハシャギまくっていたクセに…)。なので、手前みそを延々、書きたくなるのですわ。ゴメン、許してたもれ。笑!

さて、本題です。阪神にとっての悲劇の続編は避けられました。スアレスの流出に続く、梅野のFA権行使による、国内他球団流出は防げましたね。

まずスアレスについて触れますね。守護神スアレスは退団するや、すぐにパドレスに単年契約の年俸700万ドル(約7億9千万円)で入団しました。このコラムでは阪神がスアレスを引き留めるには最低でも年俸4億~5億円の2年契約が必要-と書き続けていましたね。総額8億~10億円の決済が必要で、果たして阪神電鉄本社の藤原崇起オーナー兼球団社長ら本社幹部がそれを了解するのかどうか? 11月20日過ぎの段階で球団内部からは「ウチは渋い…。厳しい」という〝弱音〟が漏れていました。

スアレス退団と同時に球団は新外国人投手の獲得を発表しました。1人目はアーロン・ウィルカーソン投手(32=ドジャース3A)です。メジャーでは14試合登板で1勝1敗。先発タイプですが、推定年俸は65万ドル(約7150万円)。そして、獲得が確定的な投手がもう一人おります。今度はリリーフタイプのカイル・ケラー投手(28=パイレーツ)です。パイレーツに所属した今季は救援で32試合に登板し、防御率6・48。メジャー通算44試合に登板して1勝1敗です。ケラーもたぶん、推定年俸は80万ドル前後でしょう。約9千万円ぐらいですか。2人合算でハウマッチ? スアレスの今季年俸は2億6千万円です。新外国人投手2人に対する年俸+トレードマネーを合わせても、スアレスの今季の1人ぶんですかね。いや、そこまで行かないかも⁉

ここからは邪推ですが、阪神球団はスアレスの残留をかなり早い時期に諦めていたのでしょう。コロナ禍で苦しむ本社や球団の経営状態を考えれば、とてもスアレス一人に10億円など投資できないのでしょう。なので、球団内部ではウィルカーソン&ケラーに早くから舵を切っていた。問題は2人の新外国人投手が果たして、来季の1軍戦力になるのかどうか…です。ヒラメや鯛を取り逃がし、網にかかったのはメザシ⁉だったら悲劇です。新外国人投手が先発ローテ入り&新守護神に収まってくれるのならば、一連の経営判断は「見事な経費の削減。経営効率を格段に向上させた」と褒めちぎられるでしょうね。さあ、どうでしょう。ダメならズタボロにたたかれるでしょうね。

■梅野残留で問われる指揮官の意思疎通

そんなスアレスショックの続編か…と心配されていたのが国内FA権を取得していた梅野の他球団への流出でした。それが、梅野自身は熟考の末に「FA権を行使せず阪神残留」を決断したのでした。3日に球団から発表されましたね。

「今年あと少しのところで優勝を逃して本当に悔しい思いをして、やっぱりこのチームで優勝したい。その思いが一番でした」と語った梅野の発言には『来季こそ…』という執念が感じられましたね。

梅野は今季130試合に出場し、打率2割2分5厘の3本塁打、33打点でしたが、前半戦は高い得点圏打率を誇り、守備の要としてチームを引っ張ってきましたね。広島・会沢の故障により、東京五輪の日本代表にも選出され、金メダルメンバーにも輝きました。しかし、9月に入ると打率も急降下。10月12日の巨人戦(東京ドーム)からは坂本にスタメンの座を譲りました。結局、そこから11試合連続でスタメンを外れました。クライマックス・シリーズのファーストステージの巨人戦(甲子園球場)でも第1戦は坂本がスタメン捕手でしたね。

こうした一連の起用法から、捕手出身の矢野監督の梅野に対する評価は一体どうなのだろうか? という疑問の声がチーム内外で渦巻きました。さらにFA権を取得した梅野に対して、指揮官は直接、表立って慰留する行動には出なかったのです。テレビ番組に出演した際、「僕が監督になってからもリュウ(梅野)が一番(試合に)出ていますし。もちろん来年も一番、レギュラーに近いのは梅野に変わりはない」と発言しましたが、「来季も梅野がレギュラー」とは言いませんでした。

もちろん、どのポジションも選手が力でレギュラーを奪うもので、監督や首脳陣が「与える」ものではないのかもしれません。しかし、今季も130試合マスクをかぶり、昨季まで3年連続でゴールデングラブ賞を獲得した梅野を〝買っている〟のならば、指揮官の言動からはもっと「坂本よりも梅野優先」-が色濃く出てくるのではないでしょうか…。そのあたりは矢野監督もけっこう、正直なのでしょうか?

結果として、梅野は残留します。これは本来ならばチームにとって追い風のはずです。それが普通の感覚のはずです。ところが、もし来季の3月25日シーズン開幕戦(ヤクルト戦=京セラ)から、スタメン捕手として坂本が選択されるならば、今回の残留劇はどのような形で振り返られるでしょうかね。残留した梅野が控えならば、ベンチには微妙な空気が流れるのかもしれません。強い追い風のはずが、思わぬ逆風…とならないように、指揮官は梅野と十分に意思の疎通を行い、捕手の起用法を決めなければならないはずです。

今季、逆転優勝を飾り、日本一にも輝いたヤクルトは正妻・中村の貢献度が輝きました。優勝するチームに名捕手あり…ですか。捕手の固定は大事でしょう。梅野の残留をチームとして絶対に追い風にしてほしいものですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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