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武蔵野市長の透ける政治野心 論説副委員長・佐々木類

記者団の質問に応じた東京・武蔵野市の松下玲子市長=武蔵野市役所
記者団の質問に応じた東京・武蔵野市の松下玲子市長=武蔵野市役所

菅直人元首相のお膝元で、国の統治機構を揺るがす条例案が21日に可決される可能性が高まっている。東京都の西部に位置する武蔵野市だ。選挙で互いに協力し合うなど菅氏と密接な関係にある松下玲子市長が、住民投票で日本人と外国人を区別せずに投票権を認める条例案を市議会に提出した。

松下氏は、東京都議を経て平成29年に市長に就任し、今年10月の市長選で再選を果たして現在2期目だ。選挙では立憲民主党や共産党、れいわ新選組などの支援を受けた野党系の市長である。

条例案で懸念されるのは、安全保障やエネルギー問題など国政に関わる事柄が住民投票に付された場合、外国人の意思が影響しかねないことだ。憲法で参政権は日本国民固有の権利とされており、条例案は違憲の疑いが濃厚だ。

松下氏は「代表者を選ぶ選挙と投票結果に法的拘束力がなく意見表明するための住民投票は位置付けが異なる」と述べている。確かに、住民投票に法的拘束力はないものの、条例案には「議会と市長は投票結果を尊重する」という規定も明記された。投票結果が政治的な意思決定過程に影響を与える可能性が指摘される所以(ゆえん)だ。

松下氏は「外国籍住民の排除に合理的な理由はない」とも語っている。だが、武蔵野市のJR吉祥寺駅前で5日午後、反対演説していた自民党の長島昭久元防衛副大臣は「市長には異例なことをしている自覚がない。他の自治体は不合理だというのか。市長自らが合理性を説明すべきだ」と述べた。

中国人、韓国人ら知人の顔を思い浮かべると、ことさら排外主義をあおることは厳に慎まねばならないと思うが、それと外国人参政権の問題は別次元の話である。特定の政治勢力に属し、市政や国政に影響を与えることを目的として市内に移住しようと考える人が出てくる可能性だってある。

仮に私が外国人留学生なら、市が小まめにアンケートを実施したり、通訳のいる専門の相談窓口を増設してくれたりした方が、よほどありがたいと思うだろう。その方が外国人の多種多様なニーズに応えることができるからだ。

松下氏には、菅氏の後釜を狙って条例を手土産にしたいという政治的野心が透けて見えると言ったら言い過ぎか。条例案が可決、成立すれば、他の自治体に波及する恐れがある。国益を損なう地方自治なら百害あって一利なしだ。