主張

首相の所信表明 発言の実現力が問われる

臨時国会が召集され、岸田文雄首相が第2次内閣発足後初めての所信表明演説を行った。

自民党総裁選や衆院選で首相は「聞く力」をアピールしてきた。これからは、演説で挙げた諸政策を実現していく力が問われることを、大いに自覚すべきである。

新型コロナウイルスをめぐり、新たな変異株「オミクロン株」のリスクが生じた点も踏まえ、「最悪の事態を想定」して対応すると表明した。

ワクチンの3回目接種をできる限り前倒しすることや病床確保、経口治療薬の年内の薬事承認などを確実に果たしてほしい。

成長も分配も実現する「新しい資本主義」の具体化を改めて訴えた。令和3年度補正予算案の成立にとどまらず、民間企業の賃上げ支援などで実効性のある政策をまとめ実行してもらいたい。

注目されるのは安全保障政策である。敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していくと表明した。国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画をおおむね1年かけて改定する方針も打ち出した。

中国やロシア、北朝鮮は弾道ミサイルの変則軌道化や極超音速兵器の開発、配備を急いでいる。ミサイル防衛だけでは迎撃が困難だ。自衛隊が敵基地攻撃能力を持つことで抑止力を確保することが急務である。

岸田首相は「国民の理解や、後押しのある外交・安全保障ほど強いものはない」と述べ、国民への丁寧な説明を約束した。

首相や岸信夫防衛相は国会で、ミサイル防衛だけでは国民を守り切れなくなった厳しい安全保障環境を説明し、敵基地攻撃能力の必要性を明快に訴えるべきだ。

防衛力の抜本的強化には、岸田首相が防衛予算の思いきった増額を決断することが欠かせない。

台湾情勢への言及がなかったのは物足りなかった。日本の首相が「台湾海峡の平和と安定」の重要性を繰り返し語ること自体が、台湾有事の抑え込みに寄与する。

憲法改正では、国会議員に対して国民の議論を喚起していこうと呼びかけた。ならば、憲法のどこを改めるべきだと考えているのか、自民党総裁の岸田首相自らが率先して国民に積極的に語りかけていくときである。